中堅作家をまんがタイムきららはアニメ化する気がないのだろうか問題

いやー、ごちウサアニメは大名作ですね。これは100年に一作品の作品ですわ。早くも今年の覇権で決まりでしょう。問題は私は殆ど見てないことですが。今回はちょっとアニメのお話。きららでアニメ化された作品は幾つあるでしょうか。その中でほぼ全ての作品がきららデビュー連載作品であることに気づきます。

アニメ化作品 きららで何作品目か

ドージンワーク…一作目
ひだまりスケッチ…一作目
GA-芸術科アートデザインクラス-…きらら一作目(正しくは『棺担ぎのクロ。〜懐中旅話〜』が同年1月号で連載を開始してるが、きらら初連載とカウントして。厳密には元雑誌が潰れての移籍連載ですけど。)
かなめも…二作目(一作目はスズナリ!
けいおん!…一作目
あっちこっち…一作目
Aチャンネル…一作目
キルミーベイベー…一作目
ゆゆ式…一作目
きんいろモザイク…一作目
ご注文はウサギですか?…一作目

等々ですが(まー、大体ね。)。他雑誌の掲載歴はあるもののきららデビュー連載がそのままアニメになっている例が非常に多いです。デビュー作を完結した後に2作目を発表する例が数多くありますがその作品がアニメ化した例が全くない。
かなめも』の石見翔子が本当に例外なだけだったりします。スズナリはヒット作だとは正直思ってないので、もしもヒットしていたらかなめものアニメ化もなかったんでないかなーと思ってしまうぐらい。
きららの中堅作家、『ふおんコネクト』『しかくいシカク』のざら、『看板娘はさしおさえ』『くすりのマジョラム』の鈴城芹、『イチロー!』『ホイップノート』の未影等々、ある程度の人気を博して第2作を描いた作家はアニメ化をしていない。
とは言っても、きららという雑誌は2作品程度しか連載しない雑誌ですが。『うぃずりず』の里好、『二丁目路地裏探偵奇譚』のコバヤシテツヤ等、ある程度の実績を積んだきらら作家は、きららを卒業して別雑誌に行くことも多いイメージです(鈴城芹のように連載を続ける作家も多くいます。)
アニメ化のハードルが低いとは思いませんが、中堅作家のハードルは酷く高く感じます。中堅作家ともなると新しい色もつけづらいですし、カラーが育っていて固定層のファン以外に認知される機会も逆に少ないのかもしれません。


現在アニメ化している『ごちウサ』も大なり小なりヒットするでしょう。Aチャンネルきんモザゆゆ式と「頭からっぽのほうが夢詰め込めるでしょ。可愛いでしょ。」的作品のアニメ化を推進してきた中できららの次の一手はどうなるでしょうか。はっきりいって、このゆるふわアニメを継ぐ後継者は現在ではいません。
そういう可愛い系統の作品も幾つかありますが、この完成された雰囲気に匹敵する作品はない状態です。少なくとも私はそう思っています。だから、きららのメディア路線が次に打ち出す一手が私は楽しみなんです。評価の高い『箱入りドロップス』か、はたまた若干路線は異なるが力のある『幸福グラフティ』か。それとも、全く別の作品のアニメ化か。
きららの作品がすべて面白いなんて逆立ちしても思いませんけど、やっぱりアニメ化は強いです。アニメ化をすることで4コマ業界も活性化しますし。だからこそ、きららにはメディア化路線を続けてほしい。ぱれっとの『未確認で進行形』のように既存の物を作りかえてアニメ化することでヒットする例なんかも出てきました。
勿論オリジナルに忠実なのにこしたことはないですが、アクの強い作品をアニメ化するならこういう方法もありだと私は思ってます。だから、きららもこのアレンジ路線を追えばまた新しい流れが生まれることでしょう。できることなら中堅に花束を、そう思うわけです。


「中堅の作品をご祝儀でアニメ化なんて!」とか言われる方もいますけど、面白いのよ中堅の作品って。今のきららのアニメって期待値高い作品が順当にアニメ化してて、それと遜色ないくらいには面白いよ。
まぁ、アニメ化を推進する方々の思惑とかアニメ業界事情は私が知るよしもないのでそれは識者にお任せします。4コマ好きがウダウダ言うってのも必要だと思うんですよ。多分。それなりに。

人はヒーローになれる。いいよね、4コマって。『鈴城芹 / ホームメイドヒーローズ』

徐々に更新再開していきます。と、言いつつペース上がらない気がしますが。お久しぶりです。なんだかんだで新作が出ると特集しているお馴染み鈴城芹特集。最新作!「ホームメイドヒーローズ」だ!!

「看板娘はさしおさえ」「くすりのマジョラム」の大人気4コマクリエーター・鈴城芹の最新作が遂に登場! 今度のテーマは……特撮ヒーロー!! ある一家の子供たちが戦隊ヒーローをガチで目指す、明るく可愛く面白いハートフル特撮コメディ、開幕です。

鈴城芹、意欲作
くすりのマジョラム』『家族ゲーム』『でぃてくてぃ部』ときて、鈴城芹きららMAX連載の4コマ最新作は「戦隊ヒーローパロディの日常もの」大真面目にヒーローが大好きでヒーローに憧れて、ヒーローになろうと有事の際に何か起きたことを想定して大真面目に日常を送ってる家族を描く。
客観的に<本気でヒーローになりたい>ヒーロー思考と<でも警察もいるし悪の怪人なんて現れないしね>日常思考を分けたセルフパロディ的作品が書けるのは、群像劇の『家族ゲーム』ミステリー物の『でぃてくてぃ部』魔法を日常にした『くすりのマジョラム』これらを描いたことで作風の幅が広がって「日常」「非日常」の描き方に幅が広がった感があります。このバランスがどちらに崩れても上手くいかないんじゃないでしょうか。
まぁ、そのバランスが崩れないであろう「鈴城芹」の安心感があるのも確かなんですけど。いい意味で大人だし、いい意味で子供っぽい。ありそうでなかった「新しい4コマ」を見てる感が半端ない。新人だと書けない「中堅作家の巧み」を感じます。しいていうなら、日常に非日常を持ち込む竹本泉テイストのパロディ感。まぁ、竹本泉だと「よぅ」ってひょっこり怪獣とかが現れたりしちゃうんですけどね。それが竹本泉先生の魅力ですけど!


普通にすげー好きな作品。プールに行ったら水中戦のこと考えて、倉庫があったら秘密基地のこと考えて、必殺技のこと考えて、ロボットのこと考えて…。男の子なら誰もが考えてた「あるある」満載。あー、もうこういうのって特撮とか好きじゃないと書けないよねっ!感が凄い。

上でも書きましたけど、この作品のいいところはヒーロー大好きで本気にヒーローになろうとしてる部分と、冷静に日常を見つめてるバランス。「戦隊物好きなの今まで隠してきたんだよ? 今更カミングアウトは無理だって」とクラスメイトに隠したり、ご近所にヒーロー好きなんて言えないと言ったり。一方でお爺ちゃんは元刑事局長だけどヒーローになると周りに言ってたと厳格者に見えてヒーロー好きとギャップが心地よい。
キャラクターが烈人(レッド)、麻凛(マリン)と無理のない程度に色やヒーローに因んでるのもポイント。キャラクターが誰もヒーローを好きで可愛いんですけど、特に最年少の真白ちゃんが可愛い。モデルになる!ヒーローになんてならない!と言いつつ必殺技を意識したりとカワユス!という調子。ひゃっはー! 幼女!幼女!

それからお爺ちゃんの総司も厳格者で渋いのに大真面目にヒーローのこと考えてますし、父親の正義もいい年なのに武装とかロボットについて考えてて真剣なのに子供っぽくていい味出してるんですよね。いやぁ、やっぱり女の子もいいけど鈴城作品の男性キャラはいつだってカッコ良くもカッコ悪くて好きです。



おまけ要素として、他の作品のキャラクターが出て来たりファンへの隠し要素が嬉しい。「看板娘はさしおさえ」からヒロインの小絵ちゃんが成長して登場しています。いやいや、小絵ちゃんは永遠の小学生だよチミィ!!と思い枕を濡らす夜もありましたが、今は吹っ切れました。

もうさしおさえとか初期から考えたら10年近く前の作品(最終回から数えても5年ほど経過してる)ですから、初期の作品とか古さとか感じてもおかしくないですけど、その当時のキャラクターが出てきても違和感がないのはやっぱり鈴城芹テイストが一貫してあるから違和感をあまり感じないんでしょうね。
これからこの作品がどう跳ねるか分かりませんけど、この調子で続きつつもどんな形だとしても、一般人がヒーローになる瞬間が熱く描かれたらいいなぁ、と思います。そういうテイストの作品になったっていいと思う。これからが楽しみーな作品。


まー、ちょっと思うこと。
こんなサイトやってるくらいですから、4コマを好きと公言してますし、色々活動しつつも「これ面白いの?」と思うことも多いんです。ベタベタな学園萌え4コマなんて読むと「この作品ちょっとありがちすぎない? どこかで読んだことある既視感しかないよ。」と思うことも多いです。
本来4コマなんてのはマンネリズムの集大成みたいな部分もあるだけに、長年4コマを読む中で若干の飽きを感じてる部分もあるのでしょう。だからこそ、そういうマンネリ感を感じることも多い心境の中でこういう新しい刺激的な作品を読めることは嬉しいことだし楽しい。だから、こういう刺激的な作品は好きって言いたい。
4コマって面白い。そう思える作品がある限り私の旅は続きます。やっぱり、4コマは面白い。

"奇跡も、名言も、あるんだよ" 4コマ漫画の名言5選

さて、名作には必ず名言があります。勿論、4コマ漫画にだって名台詞や名言があるわけで。間違いなく良い作品には名台詞と呼べる感動的だったり印象的な台詞があります。と、いうわけで今回は4コマ漫画の名言特集です。本当はもっとギャグだったり、くだらない台詞も取り上げたかったのですが、今回はあえて5作品に絞ってみました。


5位:小夜子さん(『OYSTER / 男爵校長High!』)


「わたし、今日みたいな同じ今日がずっと続くと思ってた」
「でも、もうすぐ「明日」だな」

ギャグの鬼才が描く青春4コマから。最終回で卒業を迎える小夜子さんたちが言うこの台詞。漫画として「同じような毎日が永遠に続く」という構成へ言っているようにも聞こえます。それでも、明日は来るんです。ケロロ軍曹のアシスタントでもお馴染みのOYSTERさんですが、ケロロも同じで日常の中で時にこういう詩的な台詞が出てくると引き込まれます。


4位:茂雄(『重野なおき / うちの大家族』)


「お前たちがいるからな」
「あ、それ私とおんなじだ」

大家族4コマ『うちの大家族』から。妻を亡くし長年子供たちと生活する父に「父さんは元気で偉い」と語りかける娘への父・茂雄の言葉。シンプルな言葉とやり取りながら家族の重みを読み取れる。『うちの大家族』は巻末に収録されるエピソードは家族をピックアップした感動的なエピソードになっている。名作。



3位:さわ子先生(『かきふらい / けいおん! High school』)


来年の軽音部は
どうやって私を楽しませてくれるかしら?

けいおん!』の続編から。さわ子先生の最後のモノローグ。唯たちの物語が終わり、梓たちの物語がはじまり。そして、梓たちの物語が終わり。物語は終わっても、さわ子先生は学校に在籍して顧問として軽音部のストーリーは綴られていく。放課後ティータイムわかばガールズ、それらが終わっても世界は続いていく、と思うと世界は面白い。続編マダー? と、いうかかきふらい先生いい加減漫画書いてください。


2位:FXさん(『Ika / P.S.すりーさん』)



足りない
届かない
この業界にいればそんな事は日常茶飯事だ

あんたは何だだかんだ言って幸せだよ

ゲーム業界擬人化4コマから。志半ばでアイドルとしての夢を絶たれたFXさん。ライバルのうぃーさん、でぃーえすちゃん、偉大な姉であるつーさん、偉大な妹であるぴーちゃん。その存在に阻まれ時に疎まれつつも活動するすりーさんを見てFXさんが思うこと。妬みではなく、FXさんにある感情は優しさ。頑張れ、すりーさん。そういえば、ふぉーさんもでてきて"すりーさんが主役"の物語は幕を閉じようとしてますね。幕を閉じてもずっと続くのがすりーさんワールド。


1位:ゆかりちゃん(『あずまきよひこ / あずまんが大王』)


まぁそんだけの事だ
あんたらは大丈夫だろ

4コマ作品の金字塔から。高校の卒業式、ちよちゃんの「もう毎日みんなと会えなくなるんですね…」という言葉に対しての担任ゆかりちゃんの言葉。別に毎日会えなくなっても、みんな変わらないしみんな一緒、それを分かってるゆかりちゃんの大人な目線。ちよちゃんは意味が分かってないけど、いつの日かきっと分かる日がくる。この4コマのサブタイトルは「一緒」そう、離れてても一緒なんだ。あずまきよひこさんはよつばと!もそうですけど、シンプルな台詞が重いです。日常って、尊い


と、いうわけで4コマ漫画名言5選でした。他にもあるので、また機会があれば。
あなたの4コマ名言はなんですか?ってね。

"歴史とギャグの融合"重野なおき『軍師 黒田官兵衛』『信長の忍び』そして、みなもと太郎の存在

最近月1になってますが更新のペースをちょっと上げたいですね。どうも、八戸です。


重野なおきの最新作『軍師 黒田官兵衛』が発売になりました。大河ドラマと併せて出版社も売りにきている感があっていい感じのプロモーションの印象。私は古くからこの作者のファンなのですが改めてこの作品の意義と同じく歴史ギャグを描いているみなもと太郎重野なおき中心に合わせて語っていきたいと思います。

勝つか負けるか、生きるか死ぬか。
この男の"采配"が左右する。
戦国時代もっとも野心をギラつかせた軍師、黒田官兵衛とは。


横山光輝をはじめとして「時代物」を題材にした漫画は数多く描かれています。こども歴史漫画みたいなもの含めればメジャーな人物に至ってはもはや書かれていない人物は殆どいないのではないでしょうか。ただ、一方で「時代物ギャグ」という分野は、みなもと太郎が『風雲児たち』で描いている以外にあまり思い当たらない分野です。
みなもと太郎の『風雲児たち』という作品は1979年から現在まで続く戦後時代末期の関ヶ原から幕末までを描く壮大な歴史漫画で、細かく薀蓄等を入れて色々なキャラクターを詳細に書いているため現在まででも桜田門外の変が終わったところで今だに幕末まで到達していない大河作品です。
元々みなもと太郎は『ホモホモ7』をはじめとしたギャグの分野で活躍してきた作家で『風雲児たち』という作品も歴史を踏襲しつつも随所にギャグを放り込んでくる作品です。シリアスとギャグを基本的に同じテンションで描くため読んでいて違和感がない作風。それにプラスして裏付けされた歴史知識。二つが合わさって『風雲児たち』という作品が出来ています。この「歴史ギャグ」の分野に参入してきたのが重野なおき。以前から連載している『信長の忍び』という作品は長期連載になってることからも面白い作品ですが、史実を踏襲しているものの、あくまで千鳥というオリジナルキャラクターを中心に描いており創作色の強い作品です。(信長の忍者軍団なんてのも史実にあったりなかったりしますが)
だからこそ、今回の『軍師 黒田官兵衛』という作品は重野なおきにとって意欲作だと思うわけです。史実や歴史上の実在の人物を膨らまし、なおかつギャグを入れる作風。実在の人物をテーマにしている以上「嘘が書きづらい」と縛りもあります(勿論、相当膨らましてはいるでしょうが。秀吉は尻から火を出さなかったと思いますし)作者も歴史が好きな作家なのでその部分でも信頼に値します。

今回主役の『黒田官兵衛』という人物も、人物としてはそこまで掘り下げられてない人物なので(今回の大河でようやく掘り下げられてる感があるぐらいの)純粋に楽しめるという部分も大きいですね。メジャーな人物だと元々のイメージに左右されやすいですが、それがないのも大きい。
個人的な評価として、『軍師 黒田官兵衛』面白いです。私はあまり一般的な歴史知識しかないので詳細な予備知識もないですし、ゴールは知ってますが経緯は知りません。だからこそ純粋に歴史物として噛み砕いたキャラクター達が魅力的です。既に信長の忍びで出ているキャラクターも重野版秀吉や信長をはじめとして多く登場していますが、視点が違うだけでまた別の魅力があります。同じく軍師として駆け抜けた竹中半兵衛の存在と併せて面白い。あ、あと私おっさんって好きなんですよ。おっさんってカッコいい。
最も一般的にメジャーでみんなが知っているような信長にしても秀吉にしてもオーソドックスなステレオタイプキャラクターにはなっていませんが。「残忍で怖い人」「猿みたいだけど頭が切れる人」みたいなステレオタイプではなく、感情のある「重野版信長」「重野版秀吉」になっています。こも解釈もまた読んでいて楽しい。



重野なおきも『信長の忍び』を描くようになってから顕著に作風に変化もでてきました。以前の重野なおきは「オチのない4コマなんていらない」と言っているのを妻が描いた同人誌で言っていましたが、「オチのない4コマ」あくまでストーリーを描くためだけの4コマも描くようになりました。

全ての4コマにオチをつけてたら、ただの軽い歴史ギャグになってしまったと思うんです。ギャグでオチをつけない4コマを挟むからこそ作品に重みと厚みが出る。だからこそ、この作品は読みごたえがあって非常に面白い。ギャグとして消化している部分でキャラクターの個性や愛嬌が出る。このバランス感覚が素晴らしい。『孔明のヨメ』のように史実を噛み砕いて描いて成功した作品もありますが、殆どの歴史を題材にした4コマ作品は「歴史の人物をキャラクターとして起用しただけ」のなんちゃって4コマが非常に多いです。だから、4コマとしては成功していたとしても、歴史ものとしても薄っぺらい。
ストーリー4コマというのは過去にも現在にもありますが、ストーリーラインを進めるための4コマとギャグとしての起承転結4コマを組み合して作れてる作家というのは少ないです。ストーリーを意識して書いてる作家さんは殆どが「描く素材として4コマを選んでいる」だけの人なんですね(中には巧みな人もいますけど)。別に4コマじゃなくてもよくて、都合がいいから4コマを選んでるだけの人。
重野なおきは起承転結のギャグ4コマにも、ストーリーを進める意味での4コマ、どちらにもこだわりがあるから二つを融合して作品を作れる。だからこそ、作品に厚みが出て面白い。こういう濃厚なストーリー4コマを描ける作家は殆どいないから重野なおきという作家は凄い。もっと評価されるべき作家の一人だと思います。遅かれ早かれ評価される機会が来そうな気がしますが。
ただ、やっぱり4コマってパターンが決まってるんで見せ方としてどうしても意外性という部分には欠けます。その部分ではやっぱり『風雲児たち』って凄い強いんです。みなもと太郎語りをすることがあれば詳しく語りたいですが、場面によってリアル等身にしたり、劇画調の絵を入れたり。果たして重野なおきが4「4コマの壁」をを越えられるか、というが楽しみです。


ここまで「歴史物」の作家として語ってきましたが、勿論、重野なおきは『うちの大家族』をはじめとした一般4コマから麻雀4コマ、子育てエッセイと多彩な才能を発揮した方ですので「第二のみなもと太郎」ではなく「重野なおき」という一人の作家として十分すぎる活躍をしています。
これは、あくまで歴史ギャグの分野としてのお話。既に中堅からベテラン(いがらしみきおとかのレジェンドを除く)に入っている重野なおきですが、近い将来より円熟期に入り今以上に渋い作品も増えていくのではないでしょうか。同じく4コマを引っ張ってきた小坂俊史がコメディだけでなく『モノローグ』シリーズや『ステキな終末』のような一風変わった作風を取り入れてきたように変化が出てくると思います。これからの重野なおき、楽しみです。

「そういうのもあるのか―」この視点が癖になる『くらまちゃんにグイってしたらピシャってされた! / ストロマ』

さて、リハビリ期間です。新年一発目、よろしくお願いします。今回はストロマさんのくらまちゃんをご紹介。くらまちゃんというタイトルからも分かるように鞍馬天狗の子孫が主人公です。嘘です。さて、真面目にやりましょう!

ひねくれ根暗女子中学生・くらまちゃんはグイグイ美少女・喜多尋夢に迫られていた。「友達になろうよ!」「え…嫌です」「親友でもいいよ!」「一番ないです」 そんな二人の泥仕合を幼馴染みやクラスメイト、たまにそれ以外と一緒に見守る友情フワフワ4コマ!   

公式(試読みもできるよ!)


作者のストロマさんは『スターマイン』をぱれっとで長期連載しており、ドラマCD化もされている作家さん。コメディに定評がありスターマインはラブコメとしても高い評価を受けています。さて、この作品はぱれっとonlineで連載されている作品で1年半をかけて単行本がようやく刊行されるに至りました。やったね。
ネガティブな話からでなんですが実のところ、私はWEBで初めてこの連載を読んだとき、全くピンとこなかったんです。序盤なんて種まきなのは理解してますけど、1話読んだ感じキャラクターの良い部分が全然見えなくて。序盤なら当然ですがキャラクターの関係性もぼんやりしてますし、くらまちゃんは当然根暗で好感持てないし、喜多さんは変な子だし。私は結構ストロマ漫画を愛好してるつもりですけど、正直こんなん印象でした。
連載もあんまり追っていなかったりして(WEB連載を読む習慣もあまりない)だから、今回単行本を買ったのも作者買いみたいなところあるんですけど。通しで読んで段々とその初動の印象悪さがなくなりました。むしろ、その印象の悪さは「正解」でありごく当然の反応だったのではないかな、と。単行本に掲載されている作者のあとがきを読んでいてより納得しました。

WEB連載なのでわりと好き勝手させてもらえる雰囲気があるというか。そういうこともあって好き勝手色々実験と試行錯誤をやらさせてもらっています。

タイトルも長すぎて初見の方もいるかもしれない雑誌連載だと馴染みづらい部分はあるかもなーと。今はタイトルが長いラノベとか流行ってるので他の作品と差別化できていいのかもしれませんが。そういえば『聖ジョルジュ女学園暗黒料理研究会 タベルナ』もWEB連載でしたね。



この作品のキモの一つに人間関係がちょっと複雑なのが逆に新鮮で面白い作品です。主人公のくらまちゃんがコミュ障のトラウマ持ち、ヒロインの喜多さんは暴走少女なのでこの二人が合わさったらまともな人間関係にならないのは想像に容易いですが。
4コマって基本的に「友達の友達はみな友達」「仲良いのが当たり前!」「性善説」みたいな風潮ありますけどこの作品はなんか距離感があるんですよ。まぁ、別にみんなよそよそしくてギスギスしてるわけではないですけど。そこら辺のちょいギスギスした人間関係を意識して読むのも面白いかなーと。
『くらまちゃんにグイってしたらピシャってされた!』は王道のコメディを書ける作家が、別角度から作品を構築した、というのが面白い。そのギスギス感とか序盤の違和感がタメとなって「キャラクター間の関係性」が段々と育ってきて面白くなっていく。群像劇のように集団が絡み合っていく姿はどこか『ゆゆ式』を彷彿させるかもしれませんね。
この作品のピークがどこにくるのか、2巻完結なのか、それは分かりませんが作品の最高潮の瞬間が楽しみです。この作品に関してはもっと引出しもありそうですし、関係性的に重要な「くらまちゃん⇔喜多」「くらまちゃん⇔鼓堂」だけを描くことで作品として役目を果たしたと思わずに終わらないで欲しいですね。

やっぱりストロマ作品はキャラクターが絶妙。くらまちゃんが癖がある分、喜多さんの一途さと意外と常識なバランサーな部分が読んでいて安心します。その分くらまちゃんのジラシというか、ツンデレっぷりが「ふひひー!」ってなりますが。ジラされてる快感!! ヒャッハーイ!! 新たな扉!!
相変わらずメインキャラクターを食うくらいサブキャラクターが充実してる、いや、全員メインでいいんじゃないの? まぁ、サブはサブの壁を越えられないよな! 幼馴染は攻略対象にならないよな!でお馴染みのストロマ作品であります。銀花、雛社との関係性、道子のダメっ子キャラとすげー好きです。
『スターマイン』で小原くんが絡んでくる展開が個人的に好きですが、この3人もまだまだキャラを出し切ってない感じなので。サブキャラの壁を打ち破ってメインの一人になってくれればなーと。そんな展開を期待したいと思います。ラビュン!



くらまちゃんのトラウマの原因であり、今の性格を構築したきっかけでもある鼓堂さんの初登場シーン。はっきりいってホラーですよ。あんまり4コマでは見ない演出。多分、サイコホラーな展開になってカッターで顔を切られるやつ。もしくは惨殺エンド。いや、そんな展開にはならんと思うけど。


はじめは馴染みづらいかもしれませんがお勧めですよ、とね。終盤のガチ重い展開で炒飯を食ってくれるヒロインが本当に安心できる作品。読んでない人には「何を言ってるんだ」かもしれませんが、シリアス展開で炒飯を食べてくれるんですよ。いやー、炒飯食べてなかったら耐えられなかった。それが安定のストロマクオリティ。炒飯って大事!!
さて、新年一発目なので少しテンションあげてご紹介しました。今年もよろしくおねがいします。

あけましておめで

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。今まで力尽きてました。
昨年末は恒例の企画にお付き合いいただきありがとうございました。
色々と反省点もあり、もしも次回開催するなら見せ方を考えていかなくてはな、と。
今年も4コマを語っていきたいと思います。なにか面白いことしていきたいですね。
それでは、次回は久々に通常営業で4コマを紹介できればと思います。ではでは。