ゲームハード擬人化4コマ漫画! ゲームと女児への愛がいっぱい詰まった『P.S.すりーさん』

今回は先日3巻が発売されたゲームハード擬人化4コマ『P.S.すりーさん』を語りたいと思います。私の家には何故かこの漫画が3巻合わせて10冊近くあります。そのうち半分以上がサイン本だったりします。今は亡きマグマニという本屋で閉店数日前にサイン本が放出されていたためその時点で数冊すでに持っているのに「俺が保護せず誰がする!!」と大量購入した思い出がある漫画です。さすがに特典コンプとかはやってないですけど…。

アイドルとして今日も頑張るすりーさん。ステッキ片手にうぃーさん、ゾンビ大好きはこまるさん、タッチしてもいいんだよ!でぃーえすちゃん、モンハン大人気ぴーちゃん、よき理解者である姉つーさん。ゆかいな仲間達に囲まれたすりーさんの活躍を描く、アイドルゲーム風刺4コマ。

コミックスには本編である『すりーさん』そして、3巻にはさたーんさんん等旧世代ハードの活躍を描いた『すりーさん以前』があります。ブログでの連載、Webの漫画配信サイト掲載漫画等がありますが、無論それだけですと足りないため(1回につき1本掲載なので)コミックスは非常に書き下ろしが多く20本近く書き下ろしたことはある種伝説になっています。

すりーさんの魅力
「擬人化」というと、どうしても「その元ネタに寄せるために不自然な印象」をうけますが、この『すりーさん』に関してはその違和感がまったくありません。「ゲーム業界」をネタにしつつも、オリジナリティに繋げています。ゲームを知らなくてもアイドル漫画として十分に楽しむことができます(一部ネタを理解できないかもしれませんが)
ただのコメディ4コマでなく、時に「悲哀」がフィーチャーされ、すりーさんが思い悩んだり、忙しいあまり誕生日にぴーちゃんが飲んだくれたり、ライバル心剥き出しでうぃーさんが宣戦布告したり、つーさん、すりーさん、ぴーちゃんの姉妹愛…。コメディだけでなく、どこか切なくも暖かい「ドラマ」があるのが魅力的です。
それから、『すりーさん』が独自の個性を発揮しているのは、作者のIkaさんの漫画が「変」だからでしょう。絵が可愛いから誤魔化されていますが、やっているネタは相当変なのです。一度ハマるとくせになって抜けられない中毒性があります。

普通の4コマであれば、日常が連なっているはずですが『すりーさん』はゲームをネタにしたネタが多いため現実と空想が連なっています。4コマ漫画の弱点の一つに「舞台や設定」にとらわれすぎて変化がなく飽きやすい、という要素があると思います。だからこそいきなり学園4コマをはじめたり、クマが出てきて必殺技を教えてくれたり、大怪獣と戦ったり…。その無双っぷりが脈絡なくて楽しいのです。脈絡なさすぎて「?」となる時もありますが。みそ汁の作り方とか。


ゲーム! ゲーム! ゲーム!
キャラクター造形から舞台までゲームを元ネタにしているわけですが、ネタにもゲームが織り交ぜられています。ネタにしているゲームは新しいゲームから古いゲームまで様々です。例えば新作なら『ドリームクラブ』古いゲームなら『高橋名人の冒険島』…という具合です(※もっと色々あります。マニアックなのもいっぱい。)。

ただ、その元ネタになっているゲームを知らないと漫画が楽しめないか、というとそうではありません。ゲームを元にしつつもコメディ4コマとして楽しめるように昇華されています。あくまでゲームをネタにしている、というのは付加価値に過ぎません。知っていると「かなりニヤッとする」ぐらいにマニアックなネタがしこんであります。

ネタだけでなく、キャラクターにもリアルタイム感があり『PSPgo』が発表されれば"ごーちゃん"が登場し、3DSが発表されればそのキャラクターをモチーフにしたキャラクターが登場しています。雑誌連載でなく、Web掲載だったことがリアルタイム感に繋がっています。今は亡き『ゲームサイド』でもすりーさんは一時期連載されていましたが、ここまで業界風刺をしてよく連載できたなぁという感じもしますね。


ゲーム機の終焉という悲哀
ゲーム機は永遠ではありません。新陳代謝を繰り返し新しいハードが生まれ古いハードは淘汰されていきます。ですがその「ゲーム機としての役目を終える」という終わり方にも二種類の終わりがあり、それは雲泥の差です。つまり、ハード人生を全うするゲーム機もいれば、「志半ばで消えていく」ゲーム機がいるのです。
おそらく、人それぞれ「消えていく」思い入れがあるハードはあると思われますが、その中でも多くの方の印象に残っているのは『ドリームキャスト』なのではないでしょうか。強烈な印象を残すゲームを多く発表し、インターネットにも繋げるなど最先端をひた走りました。その「どりきゃすさんの終焉」はこの漫画でも一エピソードとして描かれています。

このコマしか紹介していませんが、これはせがさんの回想です。最後のコマではすりーさんに「がんばろうなっ!」と一人勝手に励ましています。そのせがさんを見ていると、個人的には「ああ、せがさんも戦っているんだな…。」と思わず感情移入をしてしまいます。普段せがさんはシリアスとかけ離れたキャラなだけに余計にです。
今だにこのエピソードが『すりーさん』の中でも一、二を争う名作エピソードだと思っています。それから、コミックスにはおまけとして作中に登場する単語の解説がついています。この回に添えられた解説がまた素晴らしいのです。

[あたしはまだやれます]
まだやれる。全然いける。今でもそう思っている。

愛されても続けられない世知辛さ。でも、ファンはいつまでもそのハードを愛し続けます。「まだやれる。全然いける。今でもそう思っている。」それは全ての「志半ばで終えたハード」に思っていることではないでしょうか。「いや、一部のハードは無理だと思うけど。特に赤いメガネつけるやつ。」という天の声が聞こえましたが無視します。
漫画キャラクターとしての「どりきゃすさん、せがさん」ハード(メーカー)としての「ドリームキャスト、SEGA」がリンクしてこの感情を生み出している相乗効果があります。レベルアップ!!
そして、志半ばで消えたハードの一人に「FXさん」がいます。PC-FXPCエンジンの後継者的存在であり、プレイステーションセガサターンと同時期に発売されました。「そんなハードあったんだ…。」という印象の方もいるのではないでしょうか。そのFXさんの最後も描かれています。

そんな「志半ばで消えていった」彼女は引退後にポツリと漏らします。

足りない
届かない
この業界にいればそんな事は日常茶飯事だ
すりーさん。あんたはなんだかんだ言っても幸せだよ

FXさんは、こうモニター上のすりーさんに語りかけます。土俵に上がることを許されないゲーム機たちを思えば、土俵にあがれるゲーム機は幸せです。「がんばれすりーさん!」と私は勝手に感情移入してしまいます。私の家にはないけどなっ!!(※我が家にはFC、SFC、PS(稼働してない)、DS(故障して修理に出してない)PSP(修理中)があります。ろくに稼働してねぇぇぇ!! まぁ、私はヌルゲーマーなんで。)

なんだかんだでなんとかなるのかも!!


キャラクターへの愛
この漫画を私が大好きなのは「愛」に溢れているからだと思います。ゲームへの愛。そもそもゲームを愛していなければ、キャラクターからネタまですべてゲームの4コマは書けないでしょう。それが独りよがりに終わらないのがこの作品の魅力なのでしょう。
そして、作者のIkaさんへの女児愛は特筆するものがあります。「幼女ではなく女児」とこだわるIkaさんのTwiiterは殆ど女児妄想であり、その偏重したまでの女児愛はもはや神の領域。その女児愛はキャラクター造形にも生かされています。「またお前のレビューは可愛いしか言わないのか!」というツッコミが聞こえてきそうですが、素敵すぎるぐらいキャラクターが可愛いです。


このお腹ですよお腹!! 「お前ついに気がふれたか」と思われるぐらいに「理解されないだろうなぁ」と言う偏重的なフェチズムを発揮しつつ、声を大にして言います。幼児体系さいっこう!! それについてはIka先生も書かれております。

イカ腹大好きです。Ikaだけに。

いやー、Ikaさんは素敵だなー。なんだかこの項は趣味に走りすぎて読み手を置いてけぼりにしてる感じがしますがあえて無視する方向でいきたいと思います。自分で言っておいてなんですが「幼児体系最高!」の部分はともかく、キャラクター愛溢れる漫画は読んでいて幸せになります。前述したような「ハードとしての悲哀」というシリアス的な展開がありつつも、Ikaイズム溢れる「コメディ4コマ」を両立してくれるのが最大のカタルシスであり作品の魅力であると私は考えます。そのバランスが崩れないのはゲームであり、キャラクターを作者自身も愛しているからなのだろうな…と。

と、いうわけで作者のブログでも(http://ikapani.blog55.fc2.com/blog-category-11.html)『P.Sすりーさん』は読むことができます。私も入口は作者のブログからでした。いつもにまして個人的に大好きな漫画ですので心からお薦めします。