「このマンガがすごい!2013」が発売されました。私も愛読者部門でアンケートに参加させてもらっています。私にオファーが来た時点で「4コマ選ばないでどうすんだよ」と思ったのであえて4コマで選んでいます。好きな作品含めて「この4コマを読んでほしい」という気持ち強めの選考をしました。たぶん、私と蝉丸Pしか4コマ選んでないです。是非とも手に取ってください。
さて、今回の企画は私も選考しますよ、4コマオブザイヤー!!と、いうわけで私的ベスト5を選びました。すごい!よりも好み全開なんで選んでる作品は少し異なります、あちらはあちらで楽しんでもらえれば、という気持ち。企画上「すごい!」は順位をつけましたが、別に順位はつけてません。
新刊部門
オトメシュラン / 王嶋環
文句なしに個人的ベスト。この作品なしに2012年は語れない。漫画的な部分がありつつもフレンチレストランの設定が生きていて薄っぺらくない作品としての面白さ、リアリティーが存分にある。ドラマにそのまましてもいいぐらいにしっかりした基盤ができている作品。「生きている」キャラクターがコミカルに描かれており、人間ドラマとして素晴らしい。個人的にはしっかりした主人公の脇にいる慎太がいいスパイスになっていていい賑やかしになっている。
父とヒゲゴリラと私 / 小池定路
父であり兄貴である総一、弟であり同居人のヒゲゴリラ、総一の娘であるみちる。母親に先立たれたというスタートを思うと不幸に思いがちだが、時折母親を想起させる描写あるもののあまり悲壮感は感じさせない。みちるの明るさ、ヒゲゴリラの客観性と優しさ、総一のぼんくらな一面が物語を明るくしている。作風が凄く優しくて、読んでいて全く嫌悪感を抱かせる描写が皆無なファミリー4コマ決定版。総一が一人先立った妻を回想する場面には言葉が出ない。今しかないこの幼児期の瞬間、大人になったみちるは何を思うだろう。
箱入りドロップス / 津留崎優
箱入りドロップス (1) (まんがタイムKRコミックス)
posted with amazlet at 12.12.14
ギンダラとキンメダイ / 渡辺伊織
明るくて人気者の姉・百萌、地味で目立たない妹菜々葉の交流を描いた作品。なんというか幸せなオーラに包まれた作品。一見地味なファミリーものだが、渡辺先生の可愛らしくも暖かい絵柄がなんとも読みやすい。関係性がしっかり構築されていて「こういうのが読みたい」というツボをついてきます。美人だからー、地味だからー、というだけで成立してなくて、各々のキャラクターのいい部分ダメな部分が協調されていて面白い。トータとななはの関係性にはニヤニヤせざるをえない!! 名作っ。
もう私以外誰も語ってないけどそれでいいってぐらいには好きな作品。数ある食エッセイの中でも客観的、かつダメなカラスヤサトシらしさが出ていて個性的な作品になっている。作者も編集者も「カレーが好き」という心にあふれてる。ただ、カレーを食ってる。それがエンタメになってる面白さ。もっと評価されていいと思います。
既刊部門
氷室の天地 Fate/school life / 磨伸映一郎
既刊を評価するのは難しい。目新しい部分はないし、面白い4コマは安定して当然に面白い。安定は評価の基準になり得づらい。作中で募集し行われた「最強偉人企画」は4コマでかつてなかった企画で非常に面白かった。ただ読者から募集されたキャラクターを載せるだけでなく、磨伸イズムに手を加えられた偉人たちは孤高の存在。それが作品のイメージに合ってて「ああ、ひむてんらしいなぁ」という出来になってるのが素晴らしい。5巻でも全く作中のテンションは落ちておらず、最強偉人対戦やら氷室のいいなづけ騒動やらで新たな風が吹き込まれているのがまたまた読みごたえあり。面白いよ、氷室の天地は。
まじん★プラナ / nino
ついに最終巻を迎えたスーパー俺様ラブストーリー(ハーレム編)。4巻完結、休載・減ページがデフォルトだったため「あれ、こんなもんぁ。」と感じる部分もあるが非常に中身の詰まった「ブレない作品」でした。妖怪を美少女になんのてらいもなく擬人化していく姿はあっぱれの一言。完璧な結末かはともかく、ランプの魔人の伏線を生かしつつ最終章まで「まじん★プラナ」らしく物語を完結させたのが素晴らしい。4コマ史に残る名作。
2巻になってもまったくテンションの落ちない面白さを保っている。この作品の言葉センスやらギャグセンスは凄まじい。普通のヒロインとおかしな皆さんのバランスがすごい心地よい。私は4コマ漫画が大好きですけど、こんだけ笑いに特化した作品ってなかなかない。その一方でクォークを中心にキャラクターは凄い可愛い。クォークの「またこの世界を不幸のどん底に落としてしまったよ。」みたいな言葉選びのセンスはなんなんだろうか。もっと評価されるべき大名作だよこりゃ。是非とも長期連載になってほしい。
と、いうわけで年間ベストでした。4コマオブザイヤーで今年の4コマ総括なんかはたっぷり。じゃっ、冬なんで。