『しあわせのかたち』から『漫喫漫玉日記』まで。ブランクを経た桜玉吉の過去から今

桜玉吉の新刊が6年近くぶりに発売しました。そこで今回は桜玉吉語りです。

桜玉吉といえば、ファミ通しあわせのかたち』でのゲームをパロディにした「3人組漫画」で知られています。漫画に詳しい方は鬱になり、その状態での日記漫画で知っている方もいるのではないでしょうか。それでは、その後は? 皆さんは知っているでしょうか。おそらく知らない方のほうが多いと思います。私に限らず「玉吉ファン」は今も数多くいることでしょう。そんな、玉吉ファンだからこそ語れる桜玉吉の今。その経緯を書いていきたいと思います。桜玉吉の過去から今。

創作系…『おやじの惑星』『ブロイラー親父FX』『ゲイツちゃん』

創作の作品はすべてが『しあわせのかたち』の延長で書かれているので特筆することはありません。現在も連載が続き10年近くの長期連載となっている『ゲイツちゃん』に関してはリアルに桜玉吉の怒りが反映されています。


前期…『しあわせのかたち』『防衛漫玉日記』

ファミ通が週刊化されてからは日常を書き記す日記漫画に。普通の日記漫画から、後々の作風を想像させる生々しい日常漫画「しあわせのそねみ」や「しあわせのかたちレア」等のダークな話も書かれており桜玉吉を語る上でははずせない一作。個人的には途中で消滅した暗黒舞踏漫画『ラブラブルート21』をもう一度読みたいです。
その完結後に書かれた『防衛漫玉日記』は基本的にはレポート漫画の要素を持った日常を茶化した空想含みのパロディ風日記漫画だが、中には生活費の話や日常の生々しい話も書かれている。桜玉吉にとって最もふざけた日記漫画。


中期…『なぁ!ゲームをやろうじゃないか なげやり』『幽玄漫玉日記』

なげやりは前期に属してもいいゲーム漫画で、ゲームのタイトルをダジャレにして、そのテーマにそってまったく関係ない日常を過ごす作品。タイトルが「NOEL」だったらNOEL→野エロに変換して青姦を探しに街に出たりする。だんだんとパロディが暴走をはじめ収集がつかなくなり、休載から自然消滅してしまった作品。「ぱそみちゃん」とのつながり等、幽玄に繋がる部分あり。
『幽玄漫玉日記』は離婚をし鬱になってしまった後の作品で3人組漫画以降では最も知られている「桜玉吉のイメージ」に近い作品。1巻では店に出資、2巻ではパンクにハマり暴走、その後は株に挑戦、同人誌作り…と、5巻までは初期の桜玉吉に繋がるポップな部分も絵柄・話作りに現れているが、終盤は日常を面白くするという出来事もなく、淡々とした日々を描く、後期の桜玉吉に繋がる作風になっている。


後期…『御緩漫玉日記

あくまでタモ吉という別人の設定にはなっているが『しあわせのかたち』終了以降の桜玉吉のアシスタントとの痴情のもつれに至るまでの過去の話が茶化し薄めで書かれている。過去の作品でお笑い要素強めで書かれていた編集者もリアルに書かれており、リンクしていることが分かる。しかし、途中でその話は半端に書かれなくなり、日常や幼児期の話が描かれカオスな形になり半端な形で完結する。

『幽玄』時代はまだアシスタント、編集者等と絡むことが多く「桜玉吉」一人では完結していない作品でした。その環境も作用してか「客観的に日常茶化す」ことが出来ていた作品でした。しかし、この『御緩』になってからは伊豆に自宅を買い、移住したことで単独で生活することが多く、そういった客観性や面白みという要素は大分薄れた作品でした。


『御緩』の最後では「精神疾患で第三者が脳内に現れ原稿を訂正する」というダウナーな方向にいき休載をよぎなくされました。この御緩という作品は過去のアシスタントとの下世話な過去編からはじまり、その話が前触れもなく書かれなくなり幼児期の体験、怒りっぽい日常、日々徒然と目まぐるしく変わる作品でした。



前置きが長くなりましたが、ここからが桜玉吉の「なう」の話です。今作『漫喫漫玉日記』では自宅はあるものの、漫画喫茶で生活し漫画を書いていることが語られています。ネット喫茶難民ではなく、自宅はあるものの漫画喫茶で仕事をすることに快適を覚え、お金がかかることで追い込まれているのを実感しつつ生活しています。ただ、金銭的に余裕があるかというとそういうわけではないようです。

事実、御緩完結後は隔週の4コマ二本しか書いていない状況でした。2007年1月号、正確には2006年を最後に長編は復活する2012年4月号まで1本もありませんでした。約6年間近く4コマと過去作の印税のみで暮らしていたことになります。生活費は逼迫し、私財をオークションで売る生活をしていたと今作で語られています。
自宅は物に溢れ、漫画喫茶で寝食を送る生活をしている…、そこまでに至る経緯は詳しくは語られていません。桜玉吉も既に50歳を越えました。作風の変化も生活の変化と共に変わっていくのはごく自然のことでしょう。一時期は酷く短気で全てに当たり散らすような作風になっていた時期もあり、いつまでもポップな桜玉吉ではないのは当然。今は体調も戻られて健康でいられるようですが、正直心配です。
今現在はビームでの読み切り、4コマ漫画2本、週刊文春での隔週漫画を書かれています。50歳を越え桜玉吉がいつまで漫画を書けるかは分かりません。それでも生活のために書いてもらいたいと思います。そろそろ長編漫画を書いてもいいんじゃないですか、玉吉さん。待たされっぱなしですよ、私たち。