「時は来た、それだけだ。」『氷室の天地 Fate/school life』における聖杯戦争を考える


氷室の天地はFateの公式スピンオフで脇役の中の脇役としてFate本編に登場する通称三人娘(氷室、マキジ、三枝の三人)をメインにしたギャグ4コマ作品です。キン肉マンジョジョダイナミックプロ…、そのパロディをふんだんに盛り込んだ作風から「FateだけどFateじゃない。あいつは俺の知ってるあいつじゃない。あいつはすっかり変わってしまった。」みたいな扱い方をされています。
そんな『Fate/school life』がついに時系列的には聖杯戦争に突入。前提として「作中では聖杯戦争という聖杯戦争そのものは全く描かれない」と思われます。ただ、描かれなくても、時が過ぎゆく中で聖杯戦争は確かに起きます。その点から「氷室の天地における聖杯戦争」を考えたいと思います。


この『氷室の天地』における聖杯戦争Fate本編のセイバールート、凛ルート、桜ルート、イリヤたん可愛いよチュッチュしたいよルート、BAD ENDルート、そのどのルートにも属さないと思われます。作者さんも語られていましたが、氷室の天地は「公式のあくまでパラレル」なわけで。『氷室の天地』での聖杯戦争は『Fate』の世界観を準拠しつつ『hollow』に繋がる「今までの聖杯戦争とまったく同じでありつつ、まったく違う聖杯戦争」なわけです。
前置きとして「聖杯戦争そのものは全く描かれない」と書いたとおり、「三人娘は聖杯戦争には関わらない」ことは確かでしょう。作者の同人誌『かくて自由の鐘は鳴る』では映画俳優の英霊を従えて聖杯戦争に参戦しましたが、そんなifは公認スピンオフではありえません。まー、言うても氷室の天地もパラレルパラレルルルルルルなわけですけど。
ただ、三人娘が一切関わらないというわけではなく、ルートによっては何らかの形で間接的・直接的に関わる可能性もあるでしょうが、おそらくは三人は聖杯戦争を知らずに終わるのではないでしょうか。なにかと「三人娘が直接的に関わらない=氷室の天地はギャグだから聖杯戦争は関係ない」と思われがちですが、実際のところは非常に大きな影響があります。そう、「三人娘は全く聖杯戦争と関係ありませんでした。でめたしでめたし」だけでは終われない事情があります。
それは、この『氷室の天地』メインキャラクターであり、『Fate/stay night』のメインキャラクターである"遠坂凛"の存在。そして『氷室の天地』が最大のifとなっている"沙条綾香"の存在でしょう。沙条さんは『氷室の天地』のメインキャラクターであり、そして『Fate/Prototype』の主人公です。言うなれば本来の『Fate/stay night』にはメインキャラクターとしては存在しないはず。そう、

『stay night』の主人公である衛宮士郎と『Prototype』の主人公である沙条綾香は同時間軸に存在することはありえない

はずなのです。片方か片方を打ち消す存在ですから。まぁ、それは見解の一つで「衛宮士郎が存在しつつも聖杯戦争に全く関わらないクラスメイトとして沙条綾香がいる」「沙条綾香が存在しつつも聖杯戦争に全く関わらないクラスメイトとして士郎や凛がいる」−というifも考えられないことはないのでしょうけど(その辺の細かい理論までは詳しくないので、「はぁ、共存するにきまってるだろ!」とか言われたらそれはそれで)
ドラえもんのどんなルートを辿ってもセワシが生まれる理論と同じで、聖杯戦争の結論としては「聖杯戦争の結果、沙条綾香が暗躍することで日常側の人間は誰も死なない」というなると思いますが、あくまで作者が「この連載続くの!?」と匂わせている「hollow」のスタート地点までが正しい歴史になっていくでしょう。
その正史に反するかのようにifの存在である沙条さんが存在し、生徒会役員の中にはExtraの主人公であるザビ子ザビ男たちが存在しています(これは後々の生徒会役員人事への後々の伏線だと作者も語っています。)そのifである沙条綾香らとFate本編に登場するキャラクターの化学反応は非常に面白いでしょう。先ほど述べた凛だけでなく、氷室や凛の担任であり、キャスターのマスターである葛木宗一郎、クラスメイトとして度々登場しているライダーのマスターである間桐慎二、台詞はないもののクラスメイトとして存在している衛宮士郎
特に氷室本編でも出番の多い、ワカメの存在が重要になってくるのではないでしょうか。セイバールートでも桜ルートでもお陀仏の慎二くん。まぁ、hollowで生きてる=凛ルートではありますが、『hollow』が誰のルートとも特定できない独自のルートを形成しているように本編が凛ルートというわけではありません。全く異なる形でhollowに続くいわば「氷室ルート」になるはずです。

繰り返すことになりますが、そして遠坂凛。氷室の天地のメインキャラクターであり、Fateのメインキャラクターでもあります。この存在がどうなるのか。生死、留学、色々とあるわけですけど、「聖杯戦争を潜り抜けた凛」というのは、内面的には少なからず今までと違う存在になるはずです。そしてifである沙条綾香。凛から「逃げてもいいのよ」と言われる彼女が聖杯戦争にどう向き合い、なにを求め、なんのために動くのか。

「ぶっちゃけ貴女期間中は逃げててもいいのよ?」
「ふむ」
「叶わないかも、そもそも関わる必要すらないかも…
なんて弱い考えを完全封殺できるほどに私は強くないけれど…
 「やれることをやらずに逃げた過去」−そんな重荷を一生抱えて生きれるほどの強さを持ち合わせてないっぽいのよ。これが!」

そう語る沙条さんは、なにを思い、どう聖杯戦争に立ち回るのか。強制的に参加する立場からは解放されているという話なので凛の言うとおり逃げることも可能なはず。それでも、それをしようとはしない沙条さんの決意。真意はいかに。かにかにどこかに。

既にキャス子さん、バーサーカーは召喚されています。着々と聖杯戦争の準備・種まきは進んでいます。たった1ヶ月の短い聖杯戦争Fate『stay night』と『school life』が交差する瞬間。『hollow』を作者が意識しているのであれば、交わる瞬間はより濃いものになるはず。日常がどう異常を回避して日常のままでいられるか、『氷室ルート』を突き進む『氷室の天地 Fate / school life』今後の展開に注目せざるをえない。長い長い1ヶ月がはじまる。…あ、いや、あっさり終わるかもしれないけど。


いやはや『氷室の天地』面白いです。これからの展開、期待できますよ。並行して氷室の許嫁騒動、最後の大会、温泉旅行とわくわくざぶ〜んなイベントが山ほどあります。氷室、最後の高校生活。面白くなりそうです。