マニアック4コマの旗手の最新作を本気で語ろう『ざら / しかくいシカク』

近況。そういえば、私の古くからの知り合いが赤塚賞の最終候補に入ったとか。特に私生活とかは知らんのですけど、年齢的には私より上だし、何年も「大丈夫かな。」と思ってただけに嬉しい。遅咲きの人もいくらでもいるし、これからに期待。私も夢を追いかけたいと思います。なんか、あれ。ゾンビ倒したい。

黙っていれば容姿端麗、口を開けばえろオヤジ。バレッタが特徴的でも一見フツー、実は意外とナチュラルに腹黒。見た感じは華奢で小動物、中身はもっと小動物。そんな女子高生3人にカメラを持たせたら……。『ふおんコネクト!』で好評を博したざらが描く最新作は「カメラ×女子高生」4コマ!ハイセンス&高密度はもちろん健在☆

サトります!!


ふおんコネクト』の呪縛から卒業しよう

今回のレビューはちょっと特殊な構成で。ざら作品一見さんは飛ばしてください。
私はざら先生の作品が好きです。好きだからこそ語っておかねばならぬことがあります。私は4コマ作品のベストにふおんを推したいくらいふおんが好きです。そう、私は『ふおんコネクト』を追い求めている。だから、『しかくいシカク』に違和感を覚えている。おそらく、私と同じ感情を覚えている人は他にもいると思う。告白すると『ウチはおおきい』からありました。この稿はそんな呪縛からの卒業文集。
ざら作品の全ては『ふおんコネクト』からはじまっています。『ふおんコネクト』は全てにおいてチートな作品でした。キャラクター、話作り、設定、パロディズム、全てにおいて「常識を逸した」行動を平気でする、それができる物語であり、それが魅力でした。チートなキャラクター達が"普通であろうとする"その「逸脱」とチートキャラ達が日常を生きるために画策する「回帰」を楽しむ物語だった。
私が考えるに『ウチはおおきい』『しかくいシカク』が『ふおんコネクト』と比べて違和感があるのは「チートではないから」ではなかろうか。もっと、はっきりいえば「これは『ふおんコネクト』ではないから、です。」ざら作品が好きであれば好きであるほど、『ふおんコネクト』の暴走特急を求めている。はっきりといえば、マニアックでグダグダで大袈裟で等身大で…。しかシカには一種のもどかしさを感じ、爽快感を求めているわけです。ちなみに、ふおんからストーリー性を抜いたのが『わがままDIY』になります。ちなみに。この作品について「パロディ満載小ネタたっぷり…」なんてレビューは書いても仕方がないと思うんですよ。ざら先生のパロディは作者性と言ってもいいくらいであり、賢明な読者であればごく自然にそれを理解しているじゃないですか。あくまで付加価値をメインみたいにレビューするのは作品性への否定に近いんでないかなーと。受け取り方を決めるのは私ではないけど。
さてさて、『ふおんコネクト』が好きだからこそ、そろそろ整理しようじゃないか、私。そのためにこんなグダグダと長文を書いたのだから。しかシカをふおんコネクトとは違う作品、違うとらえ方をしないといけない。しかシカが面白いからこそ、卒業しないといけないわけです。ま、そういうことですよ。ありがとう『ふおんコネクト』!! あ、こんなこと書いてるけど『ウチはおおきい』も『しかくいシカク』も好きですよ、っと。


読み込めざらイズム
『わがままDIY』に顕著なキメポーズが豊富だったり、しかシカは今までの作品とは異なる印象を覚えました。なにが違うのだろう、とモヤモヤしていましたが後書を読んでいて「なるほろ」となったりしました。

・実験ベースのネタ多め
・キャラ立てをあまり極端にしない
・お話の組み立て方が真逆
・エロネタ解禁

この作者の後書を読んでいて大分スッキリしきました。それが違和感に繋がる部分もあるのでしょう(呪縛は卒業したよ!)読んでいて分かりやすいですが、非常にフェチズムを感じさせる部分や下着等の肉感的な描写も多いです。個人的にはロリ好きなので、グラマラスなキャラクターが肉体を強調する描写はあまり好みではないのですけど。
個人的な印象としては濃さが増して話の複雑さが増したなぁ、と。ある種、分かりづらい。「ウチがおおきい」なんかは分かりやすい作品でしたし、初期の作品のイメージ(分かりづらさ)に近いです。五目並べのような分かりやすさを失い、詰め将棋のような複雑さがあります。読みやすい4コマが増えている昨今を考えると特殊でしょうか。一種のざらイズムです。
今作品はカメラがテーマになっているだけにカメラネタ・AVネタが豊富。PCネタがたっぷり詰まった『わがままDIY』に近いイメージがあります(『でじぱら』に近い印象。)。従来の作品もオタクイズムは豊富でしたが、アニメ・漫画以外の要素が豊富になってる感じ。まぁ、そういうイズムは一要素でしかなくて、ざら作品共通のテーマである(と、私が勝手に思っているわけだが…)"人間賛歌よろしく人間ドラマ"を描いています。
ふおんコネクト』がチートだらけの完璧超人ならば、『しかくいシカク』はどちらかといえば駄目な子の集まりです。残念美少女、不器用な自虐常識人、空気の読めない地味ヒロイン…。完璧超人と書きましたが、みーんなどこか欠けてる人の集まりでしたけど。ざら作品が描くのは「人間の成長ドラマ」ですから、欠けてるのが当然なわけです。

この作品は夢を見つける物語だと思います。カメラを通して、部活を通して、人と人とのやり取りで。「撮りたいものはないけど、撮るのは面白そう」そんな感情から、撮りたいものを見つけていくのでしょう。『ふおんコネクト』が交流の成長物語だったように、この作品も魚、茜、十子の成長物語です。

茜以外は短所が見えづらいので成長が図りづらい部分はありますが。それが「キャラ立てをしっかりしない」という部分でもあるのでしょう。それも思春期の女の子を描いているから、なのかな…と。下ネタが多いのも思春期エナジーを放出させているからなのかなー、なーんてね☆


一種の「分かりづらさ」を兼ね備えつつもざらイズムを堪能できる今作品。私の推しは茜ちゃんです! 十子の男子学生イズムはちょっと受け入れづらいし、魚の長所は正直分かってない。だから、茜ちゃんは分かりやすいし受け入れやすいんですよね。十子ちゃんへの愛情とか。もっとみんなを好きになれるといいな、と思います。
今のキャラクターバランスは良いけど、チートがいないとちょっと物足りないなーと思う部分もあります。ふおん、夕ちゃん先生、芽依さん、わらし様…作品を引っかき回すトラブルメーカー。十子ちゃんがそうなんでしょうけど…ね。あとマスコットも欲しい。マタンゴちゃんラビュン!



つーわけで、思い入れたっぷり主観レビューでした。茜ちゃんラビュン! では、こんな感じでまた次回。