目指した「自由」の先にあるものとは?『まんがタイムきららミラク』

今回はきららレーベルの「まんがタイムきららミラク」を語りたいと思います。ミラクに関しては前回のエントリを見て頂ければ、ということで説明は省略したいと思います。「レビュー企画立ち上げてるんだからサッサと書けよ。」というツッコミは無視することにします。「もっと自由にレビューを」ということで。


ラクが表現する「自由」とは〜その1〜
ラクのキャッチコピーは「もっと自由に4コマを」です。さて、ミラクの表現する「自由」とはなんでしょうか。言葉のとおり、ミラクの作品群は4コマとしての枠にこだわらなかったこそテンプレート的ではない「新しい作品」が生まれています。それらはどこか新しい物を目指した「アオハル」や、主流とハズれた雑誌である「Fellows!!」に近い匂いを感じます。

しかし、それが「イコール面白い4コマ漫画」かというと別物です。ミラクは作品全てではないものの「オチがない4コマ」を主流にしています。例えば一般的な4コマ漫画は「漫才的な言葉と言葉の掛け合い」であれば、ミラク郡は「設定や雰囲気だけで笑いをとるコント的」…とでも言いましょうか。
オチがなければヤマがないわけで。ミラクはそんな「起承転結の結というオチをクリアした4コマが少なすぎる!!」と言わざるをえません。単純に経験がないからそこまでの技量に至らなかったのか、それとも「狙い」であると考えるかはお任せします。ただ、だからといって「あんまり笑えないし低次元だな…」とまでは思わないわけで。
一部の方は「オチがない4コマは低次元」「4コマ漫画である必要すらない」と否定するかもしれませんが、確かに「雰囲気だけ」で終わってしまう漫画があるのは事実であるものの、ミラクは比較的「雰囲気で読める4コマ」が多いと思います。


今のきららを中心とした4コマ漫画の中にも多く存在していますが、それらの作品は「雰囲気重視」であると思います。最近の4コマは雰囲気だけで読ませる4コマが多くあります(ゆゆ式アクアリウム等…異論は認める。)
あずまんが大王』なんかも一部は「これオチなの?」的ネタがありますが、雰囲気で笑いのツボを抑えているから面白いのですよね。「その雰囲気ってなんだよ! 雰囲気と笑いのメカニズムの回答編マダー?」という疑問には「オチてはないけどなんか笑えるのよね。イエーイ!」という感じに曖昧に解明しておきます。


ラクが表現する「自由」とは〜その2〜
ラクのスパイスは基本ストーリー性のある【「日常」+「非日常」4コマ漫画】です。その要素が雑誌のルールなのでしょう。日常とは「学園生活・何気ない日常」的ないつもの4コマ、非日常は「戦闘、化物、妄想、変身」的なものです。

上手く呼応して素敵な世界観を作っている漫画もありますが、中には「これ普通に日常やってくれねーかなー…。無理矢理Gファンタジーしなくていいのに…。」という作品も一部あります。

一般的な4コマ雑誌と比べてページ数が多いためかただの日常を描くだけでは息切れ感があるのか、どの4コマもストーリー要素が含まれています。そのため「気軽にどの回からでも読めるにゃー!」という4コマの鉄の掟は簡単に覆らせられています。一見さんが入りづらい雑誌というリスクはいかんせんありますね。
「つーか、1話からでも唐突すぎる。スイカ人間だの妖精だの王様とか…。」という漫画もありますがそれは置いておきましょう。つまるところ「きららフォワード」のストーリー漫画を4コマにした…という感じでしょうか。うん、まんまそんな感じ。
ストーリー要素自体は珍しくないですが、それを一挙集中させて4コマ誌を作るのは「4コマ誌との挑戦」としては新しいのではないでしょうか。※「いや、もうあるけど…。」とツッコミが入った場合は「な、なんだってー!!」と思うことにします。
よ・だ・ん。「キルミーベイベー」って殺し屋を日常に取り入れた凄い漫画ですよね。この自由さを越えられてないのが惜しい。


作品れびゅー
レビューの"縛り"である巻頭・巻末作品を含めたレビューを書きたいと思います。巻頭は「雑誌を象徴する看板作品」巻末は「雑誌を締める重要な作品」であるという意識に基づき選定した作品です。まぁ、そういう意図が本当にあるかは私の想像なので分かりません。多分アルヨー的なレベルでお考えください。


リリィ

悪魔が憑いていると噂される屋敷で久美は謎の人物と出会って…。

表紙であり最もプッシュされてる作品ではありますが、「これ4コマである必要ないなー」という第一印象。言葉遣いや表現がどこか稚拙で空回りしている印象をうけます。これから先でキャラクターを好きになれる要素があることを祈る。


桜Trick

学校はキスをするような場所じゃない→勉強もしないで寝ているあなたが言うの?→じゃあキスしよう→ガチ百合大勝利!

ただの学園物かと思いきや、久々の突き抜けた百合系漫画! 女子デープキスマジチュッチュ。そのチュッチュもエロくはなく、背徳感もないライトっぷりが可愛い。
どこかの誰かが「初めが上の口なら最後は…」とか言い出しそうで怖い。最後の最後でこんなマジチュッチュでこれからどうなるのかが楽しみ。普通に学園物としても稚拙な描写が上手く作品の雰囲気とマッチしている。


純粋欲求系リビどる

童貞の授人工の欲望が化物になるから美少女転校生変身ヒーローがエロい格好で助けてくれる。

ハーレム物なのか、それとも変身ヒーロー物として描かれるかは分からないが(その両方?)個人的には面白い。
主人公の妄想表現が面白くテクニカルな印象をうける。童貞的なエロス(可愛さ)の表現が素敵! あまりきららレーベルにはない「童貞的魅力」を感じる作品であるため先が楽しみ。ビバエロス!! 夢も希望もあるんだよっ!!


Good night! Angel

殺し屋が一人暮らしで学園生活でわふー!


ラクは「一枚絵の集合体」的な絵が多い中、構図も豊富でキャラクターも可愛くて和む。可愛さで押し切られているようにも感じますが。日常と殺し屋としてのギャップに悩まされるのか、それとも共存していくのか。戦闘シーンのようなものも描かれていることから、先行きが不透明な部分も多い。なにが重視される作品になるかは分からないが、これからが楽しみな作品。この作品に関しては「可愛いは正義!!」と叫んでも言いんじゃないかしら?


月曜日の空飛ぶオレンジ。

落とし穴を掘ったり自販機からスイカが出る。


日常にSFを持ち込んだようなシュールさ全開の学園コメディ。あらゆる部分で意味が不明だが「今しかない青春」が感じられ『うる星やつら ビューティフル・ドリーマー』のような「永遠に続く夏休み」を彷彿させる作品。こんな作品ばかりだと困るが1作品ぐらいあってもいい。そんな作品。個人的には大好き。


スイートマジックシンドローム

お菓子王国の第二王女がプリンから出た。

みずしな孝之は「言葉よりも動きで説明するのが4コマ漫画」的なことを言ってました。…それがまったくできてないなぁ、という印象。文字数多いですよね。なんかいかにもーな可愛さとありがちな大喜利だけで押し切ろうとしている感じがします。「可愛いは正義!」と言っておいてのこの感想は矛盾している気もする。いえい。


びぎなーず9

女子野球部を作ろうとするピッチャーとキャッチャーのお話。


題材も良く絵柄も個性的。ただ、個性的である一方で雑に感じられる部分も。表現がどこかコロコロ的であり「藤子不二雄」や「赤塚不二雄」的な昭和の匂いがします。面白いものの、どこか4コマ漫画としてもストーリー漫画としても中途半端な印象をうける。ギャグをやるならギャグ、シリアスをやるならシリアスで統一されるべきだった。絵柄にしてもストーリーにしても半端であることから、もっと決定的な「なにか」が欲しかった。


総括
なんだかんだで次も楽しみダネ! びぎなーず9って大正野球娘みたいダヨネ!