青春というタイムリミット。ごはんはみんなで食べるからおいしい!『でり研』

今回はグルメ4コマでり研を語りたいと思います。どういう作品かは帯に書かれたコピーをまずはご紹介。

『父を越えろ!!』究極VS至高のB級グルメ!!
美食ハンター海原裕子がゆく!!


この紹介から分かるとおり「究極VS至高」というテーマを主にしたバトルグルメ4コマです。海原の血を正統に受け継いだ主人公が…って、ちげぇぇぇ!! 公式の帯でトリックオアトリートしないでください…。と、いうわけでギャグはこの程度で辞めて(ギャグって言うない)真面目にあらすじをご紹介。

大学生の田中健一は偶然でりしゃす研究会に引き込まれる。そのでりしゃす研究会とは「おいしい」を楽しみ、「おいしい」を極める部活。つまりはおいしい物を食べてダベる部活。その部活の雰囲気が気に入った健一はでり研に正式入部。ツンデレ美食家、犬っ子、ボクっ娘先輩、メガネ会長…。無自覚リア充な生活を描いた青春系フードライフサークル4コマ。


変化していく人間関係
「この漫画のなにが面白いか?」と尋ねられればネタでありキャラクターであり…という話になります。その中でも、掘り下げられるごとに段々とキャラクターへの印象が変化していくところに注目したいと思います。
メインヒロインの一人である海原裕子は初期は典型的な高飛車キャラとして描かれていますが、キャラクター間の交流を通して徐々に印象が変わってきます。主人公が他の女性に見とれて女性に嫉妬したり、自分の過ちに気づいて涙したり、特撮大好きだと判明したり…。


「ああ、この子ってこんな可愛い子だったんだ…。黒髪ロングだし…。」と愛でたくなります。掘り下げれば印象が変わるのはどの漫画も同じですが、それがこの漫画は顕著だと感じます。
それはひらふみさんの表現する力が豊かだからでしょう。感情表現豊かに時に可愛く、時にエグく描かれており男性作家とは違う女性作者特有のキャラクター表現を感じます。(男性作家と女性作家の違いに関しては長くなるのでそのうち。)


あらすじのみを読むと「飯食ってダベる…。はいはい、また最近流行りの「女の子いっぱいでワイワイ話す系の4コマね。」と感じてしまいそうですが、この漫画がただのコメディ4コマでは終わらないのはキャラクターが背負う「でり研にいる存在理由」です。でりしゃす研究部が持つ「みんなでご飯を食べる空間」が好きです。

一人で食べるごはんは温かいのにつめたくて
けど今はそうじゃない。暖かなコーヒーとにぎやかな部屋と。
私は楽しいセンパイ方に囲まれてとっても幸せですよ。


例えばこの井ノ原まこは両親が仕事でいないため一人で食事をする環境にあったようです。その冷たい食卓を強いられた喪失感の補完を"でり研"に求めています。「けいおん!」でも唯が軽音部に入った理由は適当ですが、そこには理由があります。それはキャラクターのアイデンティティを形成する重要な材料です。

まこちゃんの笑顔。この笑顔が全てを物語っていると思います。まだでり研にいる理由が明かされていないキャラもいますが、それぞれにエピソードがあると思います。そのエピソードが明かされるのが楽しみです。

僕たちが黒髪ロングが好きなのにもエピソードがあります。多分。


青春というタイムリミット
この漫画には私の大好きなキーワードがあります。それは「いつかは終わりがくるけど、永遠に続いたらいいなと思うような青春」というキーワード。それを体現するようなまこちゃんのモノローグがあります。

願わくば
この楽しい時間が
学生時代を卒業するその時まで
続きますように


夏合宿の際のマコのモノローグ。「センパイ達とみんなでこうやってワイワイやるの楽しくて大好きです」と先輩に対して言った直後のまこの思いです。永遠に続いてほしい楽しい時間。でも、それはタイムリミットがあるからこそ楽しい。
いつかは思い出になってしまう青春時代の一幕。このでり研ではそんな"いつかは終わる青春"が描かれています。


余談。「『魔法のスター マジカルエミ』のOVA「蝉時雨」では大人になったエミが当時の何気ない夏の一日を回想するんだぜ…。変身も魔法も使わないけどあれが青春だったんだよ! もう二度と戻ってこない少女時代の一幕。あれが青春だったんだな…」と語りたいですが、元のネタを誰も知らないのが惜しい。あのエヴァフリクリの鶴巻監督に「私にはマジカルエミの描いた日常ががあるからけいおん!は必要ないんです。」と言わしめた一幕です。


潜在的「エロさ」
なんか比較的真面目に書いてた気がするんで、この作品の持つ「潜在的エロさ」について書こうと思います。直接的な描写エロスと間接的なエロス描写があるとすればこの作品が持つのは圧倒的に後者。

幾度か書いたとおりマコちゃんはいい子です。いい子なのにナチュラルにエロいから困る! スタイルがよく隠れ巨乳であり、ことある度に妄想癖を爆発させます。純真な子がエロいとかいいよね! さぁっいこう!! 私としては「無自覚エロ」という言葉を推奨したいと思います。エロス!!
あと、ボーイッシュ先輩のあきらさんもエロいです。

主人公である大仏くん(本名は田中健一だがおでこにホクロがあることから大仏と呼ばれている)は過去に「罰ゲームで告白され男心を弄ばれた」という過去から「恋愛で傷つきたくない」という防御意識が働いています。
「おいおい贅沢な悩み言ってんじゃねーぞ! この無自覚リア充がっ!!」とツッコミたくなりますが、その感情を察したあきら先輩が悩みを聞き包み込んでくれたおかげでその氷も溶けていくのではないでしょうか。
あきら先輩はツルペタだけど、その大人の包み込むような部分が凄い可愛いんです。その優しさが「潜在的エロ」を感じます。異論は認めません。ラビュン! 私もあきら先輩と一緒にお風呂に入りたいなぁ…(心から)

あきら先輩マジ可愛い。コーヒーの飲み方が汚いあきら先輩マジ可愛い。


この漫画のゴールが「恋愛」だとは思いませんが、作品上でも恋愛要素があることが提示されています。今後の恋愛展開がどう動くかにも期待したいところです。あと色っぽい意味でも。大学生だしね☆ …ただ、恋愛方面に話が行くと絶対に誰かが傷つく気がするのですよね、作品上。それでも続きが読みたいそんな漫画です。

マコちゃんマジ天使。