プログラムを越えたロボット? 山東ユカワールド炸裂!『ロボ娘のアーキテクチャ』

久々に漫画レビューを書きます。「ちょっと時間あいちゃったらどんな風に書いたらいいか分かんないなっ!」という感じもありますが通常営業です。今回は山東ユカ先生の4コマ漫画『ロボ娘アーキテクチャ』をご紹介。「相変わらず世間の波に乗ってないレビィーだなぁ。せめて少女カフェとか…」と言われそうだけどスルーします。あ、少女カフェ最高っ。

おもちゃ会社に勤める姉が突然仕事を辞めたと言って実家に帰ってきた。一緒に連れてきたのは人型ロボットのクォーク。 USBケーブルをつないでコミュニケーションをとるおもちゃだったらしいが…制作費は9億円!? 普通の女子高生なゆたとズレたロボットクォークニートな姉との生活がはじまる!


ロボット漫画といえば色々ありますが、日常ロボット漫画といえばやはり藤子不二雄先生でしょうか。人型で女の子というとちょびっつやまほろまてぃっく等を連想します。個人的にクォークの存在で一番近いのは『キテレツ大百科』のコロ助でしょうか。荷物も重い物は持てない、できるのは無洗米を炊くことだけとかの役立たずっぷりから連想するに。役にたたないという部分ではアラレちゃんも近いかもしれませんね(酷い言いぐさ。良いんだ、可愛いから。


クォークの魅力
この作品を読んで欲しい理由はクォークが素敵すぎる もはやこれに尽きます。

クォークはロボットでありながら感情があるのが面白いです。表情はあまり変わりませんが態度やちょっと仕草で悲しんだり喜んだりしているのが分かります。よくある日常ロボット系漫画のロボってほぼ人間同然なだけに(ロボコンみたいのはおいといてね)「こんな描き方もあるのかっ!」と衝撃をうけました。
その描写の可愛さも素晴らしいですが、クォークの素敵なところは「ズレた言葉センス」でしょう。未熟なロボットゆえのズレた発言。思わずこの作品を読んだあとはクォークよろしく「○○だよー」と言いたくなること受けあいです。


(雨の中のおつかいを提案されて)
「精密機械の身には致命的だけど頑張るよ。なゆた…死して屍拾う者なしだよ」

(大きくなったらなにになりたいと聞かれて)
「主力商品になりたいな〜」

(おもちゃの猫を見て)
「生命反応のない猫だよ。急に動いたよ…兵器かな?」

キャタピラー欲しいよー」

(何歳かを尋ねられて)
「数多の試作器が作られ…。その屍を乗り越えて。クォーク・プロジェクトは稼働して5年だよ。バルハラにて待て! 同胞よ! だよ。」

こんなのほんの一部分です。クォークの発言の面白さは是非読んでいただきたいですね。クォークは言動、仕草が二つ合わさって完璧なクォークとしての可愛さが生まれるのです。『となりのなにげさん』等キャラクターが強い4コマ漫画はありますが、その中でもトップクラスなのではないでしょうか。早くクォークキャタピラーをっ!!


ズレた言葉センスも素敵ですが、なにも学習をしていない真っ白な雪原のような子供的純真さが垣間見える部分があります。その台詞にはなにかこみ上げてくるものが…。


「言わないと伝わらないよ」

「ごはんの時はみんなでたのしくお話しながら食べるのが正しい姿なんだよ」

「外出時荷物を持ってないなかよしさんは手をつなぐんだよ」

「この人形は動く?」
「自律では動かないわ」
「じゃ、こんな風にクォークを量産できたら楽しいよね」

決して無機質な言葉ではない、クォークから一人の「生命体」としての息吹が感じられます。クォークには「学習機能」もあり、なゆたとコミュニケーションをとることで段々とクォークも変わっていく印象をうけます。この作品のキモは"プログラムを越えた存在"としてのクォークが感じられることなのだろうなぁ、と。
…ただのギャグ作品として楽しんでもいいんだよー。面白いよー。


個性豊かなキャラクター郡

アラレちゃんにしても主人公的なロボットが登場すると周りが地味な印象をうけますがこの作品にはあまりそれがありません。それは山東ユカ作品に特徴的な「ズレた常識」を持ったキャラクター達が物語を支えているからです。(そのうち山東ユカ作品特集をやりたいですね。)主人公の一人であるなゆたが普通であるのが個性になるぐらいズレた方々。

一番ズレているのはクォークの制作者であるなゆたの姉でしょう。この作品の5割はクォークの奇行、あと5割は姉の奇行だよねと言ってもなに一つ間違いではないと思います。まぁ、いきなり会社を辞めたり、実は辞めさせてもらってなくて在宅勤務なのを嫌がったり、猫のおもちゃを作ったら毛玉を吐いたり、クォークにおっぱいミサイルをつけようとしたり…。あかん、ズレてない部分がない!

そして、姉をはじめとした会社の面々は初夏と聞いたら「ショッカーがどうした」と連想するマッドな人たちです。上司である浅生木は常識人と見せかけて退職を認めるためにはウルトラクイズをクリアしないと言ったりと変な人だったりします。
でもこのノリって素敵だよなぁ、と思うのは私だけでしょうか。虚構とリアリティの境目ってありますけど、むちゃくちゃやっても世界観が壊れないのは山東ユカ先生の表現力の賜物だと思います。もっと山東ユカ先生は注目されるべき作家さんですよプロデューサーさんっ! いや、もう知ってるよって人は現状維持でお願いします。
キャラクターのインパクトと山東ユカ特有のズレた感じがたまらないこの作品。『カテゴリテリトリ』や『みずたま注意報』で見せた人間関係が絡み合っていく様子を描いた漫画も良いですが、また違った山東ユカワールドを堪能できます。まだ山東ユカ作品に触れてない方がいるのであれば別作品もお薦めだよ。低スペックなあなたも読むといいんだよ。

すごいおすすめだよ。可愛いよ。新品がないんだよ。つらいよ。