のだめカンタービレ、天にひびき…「音楽を題材にした漫画は面白い!」的4コマ漫画『放課後のピアニスト』

最近映画館で『X-MEN ファーストジェネレーション』『マイティ・ソー』を見てきました。アメコミづいております。なんか、『マイティ・ソー』は来年公開される『ザ・アベンジャーズ』の伏線って感じでそこばっかり目につきました。残りは『キャプテンアメリカ』、楽しみです。さて、今回は『放課後のピアニスト』をご紹介。

劣等生は、天才ピアニスト!?主人公・レミは天才的女子高生ピアニスト。でも勉強はぶっちぎりで出来が悪い。運動も以下略。幼なじみのソラをからかうのが好き。弾く時だけは、ふざけません。将来の夢は、プロのピアニスト。ピアノ部の仲間と日々演奏中。

実のところ、私は学生時代ピアノを習っていた経験があります。まぁ、それは習い事としてだったのでまったく楽しくなかったのですけど…。この漫画の場合ピアノを弾いてるのが「すげぇ楽しそう」なんですよね。なんか「ピアノの楽しさ」を共有できる人がいればもっと楽しかったんじゃないかな、と…。まぁ、基本的に音楽的センス皆無なのがのめり込めなかった原因ですけどね。こっ、これでも一応演奏会も出たことあるんだからねっ!! あんたのためじゃないんだからね!


BECKピアノの森ハレルヤオーバードライブ…どれも表現が豊かでストーリーも熱い。音楽を題材にした漫画って基本的に面白いですよね。あ、いや、例外もあるけど。」と思います。「え、4コマも?」と思われるかもしれませんが、4コマでも音楽を題材にした漫画は面白いです。『けいおん!』がメジャーですが『うらバン』『ひかるファンファーレ』(両方とも吹奏楽ですけど)『サイダースファンクラブ』等々、どれも音楽を上手い具合に絡めた面白い漫画になっています。どの作品も作者さんの音楽に対するスタンスのようなものが見て取れて面白いです。
今回紹介する『放課後のピアニスト』の作者である十野七さんは、過去にも同人誌や商業誌で音楽に関する漫画を発表しており、その中には「安全!軽音天国」という作品もありどう見ても先見の明があったとしか思えないです。ありがとうございます。まぁ、同人誌まで語ってるとどう考えても時間足りないのでまたの機会に。私は同人イベントに行くようになったのは最近なので過去のは一部しか所有してなかったりもしますしね。


ストーリーが面白い
「いやいや、レビューサイトとしてストーリーが面白いってはじまりどうなの。センスなさすぎね?」と言われそうですが、事実ストーリーが面白いのです。この作品は作品の随所でピアノの天才だけど他はダメダメなレミと努力家のしっかり者であるソラの対比構造で描かれています。この対比が面白いんですよね。
私は「実力はあるし周りもある程度評価してるけど、天才には勝てないキャラクター」が大好きです。『のだめカンタービレ』でいえば千秋。千秋は天才ですけど、分野的な違いはあれどのだめには勝てない。『のだめ』の場合はその千秋が努力と周りの人との繋がりで成長していくのが面白いんですけど。『放課後のピアニスト』の構造はコメディ4コマの形の中ではあるものの、のだめに通じるものがあると思います。

どうしても、4コマ漫画は重いテーマを避けがちです。「ストーリー4コマ」といっても、大概は恋愛やコンプレックスとの葛藤をテーマにするのが限界であり、どうしても狭い世界しか描ききれてない作品が多いです。この作品はそれを避けずに「天才であるレミ、レミには勝てないソラ」というテーマに向き合っています。
ネタバレになりますけど、作中のエピソードでソラもレミの壁を乗り越えていくんですけどね。ただ、あくまでコメディ4コマですのでレミのキャラクターは憎めませんし(練習だと力が出せない、というキャラクター含めて)ソラは面倒見のいいお母さんで二人の掛け合いが普通に面白いです。コメディ4コマとして面白いからこそ、ストーリー部分が引き立つのだろうな、と。

と、いうわけで(どんなわけよ)ソラは愛すべきキャラになっています。ソラがいるからレミが引き立つし、レミがいるからソラが引き立つのです。この二人の決して恋愛に発展しない関係(手を握り合っても反応すらない)は読んでいて心地がよい。サブキャラであるもう一人の先輩シド、凡人のピアノ好きららさんもいい味を出してます。


コンセプトアルバムを出せばいいのではないか
キャラクターの対比やストーリーも面白いですが、この4コマで欠かせないのがピアノの表現だと思います。『サルでもわかる漫画教室』にもありましたが、実際には聞こえない音楽を表現するのは難しいです。音譜で表現する、すべ動きと声で表現する等の表現がありましたが、さてこの漫画はどうでしょうか。
この漫画の場合は状況に応じて表現を変えており、トーンを使用した絵のみで表現する場合や音譜で表現する等場面によって音楽の伝え方が変わります。音楽を伝えるのが難しい中で、ピアノも丁寧に描かれ表現には相当気を使っている気がします。ところで、作中に登場する音譜って曲に合わせているのでしょうか、気になります。

のだめカンタービレ』の場合、劇中に登場した曲を集めたコンセプトアルバムを販売していましたが、この作品もそれをやればいいんじゃない?と思います。大半は名もない曲ですが、時々実際に登場する曲も登場します。ベートーベン「悲壮」、ショパン「別れの曲」「英雄ポロネーズジョン・ケージジョン・ケージ」等々…。実際どんな曲か聞きたくなる力がこの漫画にはあります。4分33秒もある種聞きたくなります。はっきりいって無音です。ありがとうございます。



コミックの装丁が熱い!
この単行本の装丁デザインはVOLARE(参照:良いコミック http://yoicomic.blog24.fc2.com/blog-entry-179.html)が担当しています。4コマでも数多くの作品を担当していますが、どれも個性的な目をひくデザインになっています。
この作品も例外ではなく、ピアノとレミ、そして単色の背景という構図が絵を引き立てています。リンク先参照ですが、VOLAREお得意の単色背景デザインです。ただ単に単色なだけでなく、裏表紙には音譜が添えてあり、表紙には英字での作品の紹介を入れています。その英字での紹介を訳したものが帯に使われているのも憎いです。細やかな演出が素敵なこの単行本もまさに「放課後のピアニスト」と呼ぶに相応しいカバーデザインになっています。


この漫画は例の「まんがタイムラブリー」がリニューアルする際に「まんがタイムスペシャル」に移籍した作品です。ラブリーの評価するべき点はリニューアル前に人気作品を移籍させたことですよね…。つまり、この作品にはラブリー版の「イマイチキャラクターの立ち位置がハッキリしてないラブリー版第1話」と「完璧にキャラクターの立ち位置が決定したスペシャル版第1話」があるわけです。
1年近く書いてきてのスペシャル版で改めてキャラクター紹介的な1話を書くと、かなりキャラクターの印象が違うのが面白いんですよね。根底は同じですけど、伝える表現の方法が違うとか。個人的にはラブリーの1話は伝え方が上手くないなぁ、と思ったので。その点を踏まえて巻末に収録されているスペシャル版の1話を読むと面白いかなーと思います。
と、いうわけでお薦めです。