2巻になってからが本番です。期待を裏切らない面白さ!『くすりのマジョラム』

先週は更新を休みましたが、最近体調を崩しがちで集中して文章を書くことができません。今年の春頃にも体調を崩しているので無理はしないようにしているのですが…。いつも楽しみにしているという声を多数いただいてはおりませんが、紹介したい作品もあるので早く復調したいと思っています。今回は二度目となる『くすりのマジョラム』特集です。

薬剤師ラムは26歳だけど見かけは小学生。惚れ薬、やせ薬、動物と喋る薬…、今日も魔法チックなお薬と演出で営業中!!

今回の表紙は名和田耕平デザイン事務所(http://www.nawatadesign.com/)さん(※良いコミック(http://yoicomic.blog24.fc2.com/blog-entry-150.html))のお仕事。今巻の表紙は「4コマ漫画らしくない」と良い意味で評判が良かったです。元々デザインに定評がありますが、ゴチャゴチャ感が強調されていてなおかつポップ。裏表紙の魔法少女パロといいロリババアとは思えないミスリードも素敵です。


僕らが『くすりのマジョラム』特集をする理由
鈴城作品は以前に『家族ゲーム』特集を行ない、『マジョラム』特集も二度目になります。(前回『見た目は子供! 中身は26歳! その名は…『くすりのマジョラム』(http://d.hatena.ne.jp/hachinohe/20110525#p1))実のところ、私はあまり同じ作品を二度紹介しません。他のレビューサイトでもストーリーを語るレビュアーは多いですが、漫画を語るレビュアーって少ないですよね。やはり一度紹介していると、4コマ漫画は大きな変化もないため切り口が見つからないのです。ただ感想を書くだけ、とかなら出来るでしょうけど。このサイトの趣旨とはちょっと異なりますしね。
今回再登板となった理由ですが「やっぱり面白いから、なんか書きたい。」そして「発見があったから。」です。まぁ、面白さなんて語るのはなかなかナンセンスだとも思うので根本的な面白さを語る気はないですけど。後述しますが、4コマ漫画は人気作でもないと2巻完結ぐらいが多いのです。ただ、鈴城作品に関しては1巻収録はキャラクターの布石というか種まきで、2巻収録ぐらいからどんどんキャラクターを魅力的に掘り下げる印象があります。だからこそ、2巻を私自身紹介したいと思ったのではないでしょうか。


日常4コマでありつつ、この作品が持つ武器
藤子不二雄はかつて漫画を「定着型、放浪型」に分けていました。定着型はドラえもんのような住み着くタイプ、放浪型はフータくんのように放浪するタイプの漫画。4コマ漫画は圧倒的に前者が多く、この漫画もその例に漏れません。だが、この漫画は他の漫画とは決定的な違いがあります。1巻の時はキャラクターを増やし、紹介的な意味合いがあるため気づきませんでしたが、2巻では顕著に分かります。

1話…錠、ノーラ、霧
2話…麻央、育音、市屋
3話…すみれ、誠、
4話…
5話…、麻央、育音、市屋、雫
6話…すみれ、麻央、誠
7話…錠
8話…潤
※ラム、ユキはレギュラーのためカウント外。ちょい役登場も覗いてます。

これを見れば分かるとおり、ラムを中心にメインが毎回異なり、連続で登場するキャラクターが少ないことが分かります。「けいおん!」「GA」とレギュラーで固めた漫画と違い、この漫画は毎月ラムをメインに登場するキャラクター達を変えています。例えば6話では中学生組であるすみれと、小学生組である麻央がごく自然に接点を持ちます。鈴城作品全般に言えることですが、様々なキャラクターがふとした出来事で関係を紡ぎ、繋がっていく。おそらく、その変化の多さが鈴城作品が飽きない理由だと思うのです。
4コマ作品は基本的に2巻程度で終わることが多いです。それは、同じメンバーで同じシュチエーションを永遠に繰り返しているだけだから、読者は飽きがきて、作者自身にもパターンがなくなってくるからではないでしょうか。それを打破するためにテコ入れという名のキャラクターを増やすパターンも4コマには非常に多いです。
鈴城作品に関しては群像劇的作りなので、ごく自然にキャラクターが増えていく。色々なパターンが生まれ、飽きずに続きを読みたくなる。この自然な作りが他の4コマと差別化できる一つの要素ではないでしょうか。ラブリーの影響もあってか、最近「ストーリー4コマ」という言葉が流行りましたが、この作品も間違いなく「ストーリー4コマ」です。その中で、ストーリー要素はやはり「変化していく人間関係」に尽きます。2巻収録の話でもそれぞれの人間関係に少なからず変化が見えました。オザケン宜しく「愛し愛されて生きるのさ」でお馴染みの『家族ゲーム』程ではないですが。

「変化」だけでなく、2巻からピックアップするのであれば、市矢先生の人間性をより知ることができました。お泊まり回やお見合い回を通して年下扱いについてのエピソード等、凄い愛せる要素が増えたキャラクターに思えます。萌え4コマというのは男性が適当な場合が多いです。鈴城作品は適当ではないものの、どうしても女性キャラクターに比べて、似たりよったりで薄いキャラクターが多い印象がありました。市矢に関してはそういうエピソードを通して個人的に凄い好きになれました。
無論、キャラクターを知ることができたのは市矢だけに限りません。全てを列記するつもりはありませんし、それは作品を読めば分かることですしね。「あなたのお気に入りキャラは誰ですか?」と尋ねたくなる、そんな漫画です。いざ言われると迷っちゃって語れないけどな!! 母ちゃん達には内緒だぜ!!


多いよ!文章量!!

改めて思いますが、この作品は文章量が多い作品です。昨今の萌え漫画では珍しい「読ませる作品」なんですね。鈴城先生の可愛らしい絵柄から、きららに載っていても全く違和感のない作品に仕上がっていますが、ちょっと異色の作品ではないでしょうか。理系的な細かい説明部分なんて本来萌え4コマには必要ない領域だと思いますしね。スポーツやお仕事物などちょっと変わった毛色の作品もきららにはありますが鈴城先生の築いた礎が少しからずあるのかもしれません。
誤解を避けたいのは、文章量が多い=読みづらいではありません。テンポはむしろ良い漫画です。連載時に読んでいたエピソードでも、単行本で改めて読むとやっぱり面白いんですよね。それは「読ませる漫画」だから中身が濃いためだと思います。勿論、私が好きだからというのもあると思いますが。では、はい。おすすめでーす。


初めに書きましたが、同じ作品でも切り口を変えれば語れる、というのは一つの発見でもありました。自分でも無理だと思っていましたし。以前ツイッターでも書きましたが、「いつか鈴城先生をテーマにした同人誌出したいなぁ。」と思ってるぐらい好きな作家さんなので、新鮮に楽しめるって部分もあるんでしょうけどね。まぁ、贔屓目なしに「面白い!!」って気持ちで毎回書いてますけど。では、また次回。