「そういうのもあるのか―」この視点が癖になる『くらまちゃんにグイってしたらピシャってされた! / ストロマ』

さて、リハビリ期間です。新年一発目、よろしくお願いします。今回はストロマさんのくらまちゃんをご紹介。くらまちゃんというタイトルからも分かるように鞍馬天狗の子孫が主人公です。嘘です。さて、真面目にやりましょう!

ひねくれ根暗女子中学生・くらまちゃんはグイグイ美少女・喜多尋夢に迫られていた。「友達になろうよ!」「え…嫌です」「親友でもいいよ!」「一番ないです」 そんな二人の泥仕合を幼馴染みやクラスメイト、たまにそれ以外と一緒に見守る友情フワフワ4コマ!   

公式(試読みもできるよ!)


作者のストロマさんは『スターマイン』をぱれっとで長期連載しており、ドラマCD化もされている作家さん。コメディに定評がありスターマインはラブコメとしても高い評価を受けています。さて、この作品はぱれっとonlineで連載されている作品で1年半をかけて単行本がようやく刊行されるに至りました。やったね。
ネガティブな話からでなんですが実のところ、私はWEBで初めてこの連載を読んだとき、全くピンとこなかったんです。序盤なんて種まきなのは理解してますけど、1話読んだ感じキャラクターの良い部分が全然見えなくて。序盤なら当然ですがキャラクターの関係性もぼんやりしてますし、くらまちゃんは当然根暗で好感持てないし、喜多さんは変な子だし。私は結構ストロマ漫画を愛好してるつもりですけど、正直こんなん印象でした。
連載もあんまり追っていなかったりして(WEB連載を読む習慣もあまりない)だから、今回単行本を買ったのも作者買いみたいなところあるんですけど。通しで読んで段々とその初動の印象悪さがなくなりました。むしろ、その印象の悪さは「正解」でありごく当然の反応だったのではないかな、と。単行本に掲載されている作者のあとがきを読んでいてより納得しました。

WEB連載なのでわりと好き勝手させてもらえる雰囲気があるというか。そういうこともあって好き勝手色々実験と試行錯誤をやらさせてもらっています。

タイトルも長すぎて初見の方もいるかもしれない雑誌連載だと馴染みづらい部分はあるかもなーと。今はタイトルが長いラノベとか流行ってるので他の作品と差別化できていいのかもしれませんが。そういえば『聖ジョルジュ女学園暗黒料理研究会 タベルナ』もWEB連載でしたね。



この作品のキモの一つに人間関係がちょっと複雑なのが逆に新鮮で面白い作品です。主人公のくらまちゃんがコミュ障のトラウマ持ち、ヒロインの喜多さんは暴走少女なのでこの二人が合わさったらまともな人間関係にならないのは想像に容易いですが。
4コマって基本的に「友達の友達はみな友達」「仲良いのが当たり前!」「性善説」みたいな風潮ありますけどこの作品はなんか距離感があるんですよ。まぁ、別にみんなよそよそしくてギスギスしてるわけではないですけど。そこら辺のちょいギスギスした人間関係を意識して読むのも面白いかなーと。
『くらまちゃんにグイってしたらピシャってされた!』は王道のコメディを書ける作家が、別角度から作品を構築した、というのが面白い。そのギスギス感とか序盤の違和感がタメとなって「キャラクター間の関係性」が段々と育ってきて面白くなっていく。群像劇のように集団が絡み合っていく姿はどこか『ゆゆ式』を彷彿させるかもしれませんね。
この作品のピークがどこにくるのか、2巻完結なのか、それは分かりませんが作品の最高潮の瞬間が楽しみです。この作品に関してはもっと引出しもありそうですし、関係性的に重要な「くらまちゃん⇔喜多」「くらまちゃん⇔鼓堂」だけを描くことで作品として役目を果たしたと思わずに終わらないで欲しいですね。

やっぱりストロマ作品はキャラクターが絶妙。くらまちゃんが癖がある分、喜多さんの一途さと意外と常識なバランサーな部分が読んでいて安心します。その分くらまちゃんのジラシというか、ツンデレっぷりが「ふひひー!」ってなりますが。ジラされてる快感!! ヒャッハーイ!! 新たな扉!!
相変わらずメインキャラクターを食うくらいサブキャラクターが充実してる、いや、全員メインでいいんじゃないの? まぁ、サブはサブの壁を越えられないよな! 幼馴染は攻略対象にならないよな!でお馴染みのストロマ作品であります。銀花、雛社との関係性、道子のダメっ子キャラとすげー好きです。
『スターマイン』で小原くんが絡んでくる展開が個人的に好きですが、この3人もまだまだキャラを出し切ってない感じなので。サブキャラの壁を打ち破ってメインの一人になってくれればなーと。そんな展開を期待したいと思います。ラビュン!



くらまちゃんのトラウマの原因であり、今の性格を構築したきっかけでもある鼓堂さんの初登場シーン。はっきりいってホラーですよ。あんまり4コマでは見ない演出。多分、サイコホラーな展開になってカッターで顔を切られるやつ。もしくは惨殺エンド。いや、そんな展開にはならんと思うけど。


はじめは馴染みづらいかもしれませんがお勧めですよ、とね。終盤のガチ重い展開で炒飯を食ってくれるヒロインが本当に安心できる作品。読んでない人には「何を言ってるんだ」かもしれませんが、シリアス展開で炒飯を食べてくれるんですよ。いやー、炒飯食べてなかったら耐えられなかった。それが安定のストロマクオリティ。炒飯って大事!!
さて、新年一発目なので少しテンションあげてご紹介しました。今年もよろしくおねがいします。