この4コマがすごい! 鈴城芹の大河群像劇4コマ『家族ゲーム』の魅力(前編)

鈴城芹さんといえばまんがタイムきらら系列で『看板娘は差し押さえ』『くすりのマジョラム』を連載しているきららの看板作家の一人です。鈴城作品の魅力といえば、一つの空間に特化した知識(質屋、薬物等)を上手くコメディに昇華し、4コマながら濃密な世界観を演出しています。
くすりのマジョラム (1) (まんがタイムKRコミックス)

くすりのマジョラム (1) (まんがタイムKRコミックス)

そして、この『家族ゲーム』の魅力は上記の魅力とはまた違う、「鈴城芹感」があります。それは「濃密な人間関係」です。 勿論、コメディですし鈴城先生の可愛らしいキャラクタータッチは健在ですが、明らかに他の作品とは異なる尺度での人間関係が鈴城芹タッチ描かれています。
この作品は元々はゲーム誌で始まった連載であり、コミックス1巻収録分では「ゲームを行なう家族を中心としたホームコメディ」という様相になっています。それが段々と人間関係に比重が増していき、恋愛要素が比重を占めていきます。
本来であれば6〜8程度しか4コマ誌では1回にページがないため、どうしても主人公がいない4コマ漫画というのは作れません。ですが、この家族ゲームは特殊な掲載様相なので1回のページ数が多いため主人公(家族)の出番が少なくても平気なのです。

そのため、キャラクターにキャラクターが繋がっていき6巻までにキャラクターは総合計数で20人を越えていきます。ええ、はっきりいって名前を覚えることができません。ありがとうございます。
作品内で時間が経過していき、出会い、別れ、進学を経験し成長していきます。ゆっくりではありますが、着実に進展していきます。時間経過をする4コマはいくらでもありますし、恋愛をする4コマもあります。しかし、このキャラクター数で濃密な恋愛劇をやる漫画は殆どないと思います。このような「とりあえず壮大な作品」を私は「大河4コマ」と呼びます。
(他に大河4コマでどんな作品があるかというと『聖☆高校生』(小池田マヤ作品)『ももいろシスターズ』『幕張サボテンキャンパス』『サクラ街サイズ』です。他にも「定義よく分からないけど、これも大河4コマじゃないですか?」というのがあったら教えてください。)


家族ゲームは家族って題名なので珍しく家族がバンバンでてきます。きらら系は本当に岡属が出てくる漫画が貴重なので、これだけで十分特徴的です。つまりは、萌え漫画というよりも、ホーム感、ファミリー感が強いです。鈴城芹先生の作家性の幅広さを感じますね。
ただ、この作品の難点を一つあげるのであれば個性であり特徴でもあるキャラクターが多すぎること。キャラクターが多い群像劇であるからこそ、主人公である本来の家族4人の描写が散漫になっている、という印象があります。サブキャラクターが魅力的なのは間違いないですが、主人公の出番が少なく感じてしまう、その点は物足りなさが残ります。
ですが、そのゴチャゴチャ感や(一部を除いて)誰も不幸にならない、最後は笑っていられるハッピーエンド感が大好きな作品です。私にもみょーみょー言ってるゲーム好きの幼馴染みをください。幼馴染みじゃなくてもかまいません。では、これから先はネタバレありきでガンガン語っていきます。


家族ゲームでは主に3つの恋愛が軸になっています。(※以降、一部ネタバレあり)

小学6年生の元気っ娘・葵と中学3年生、悟(後に中学、高校に進学)の「格闘ゲームをやると体が動いてしまう症候群」という難病を抱えた2人の初々しくも甘酸っぱい恋愛模様

葵ちゃんの純真さの一方で意識してからの可愛さは異常。

この告白は漫画誌に残る告白だと思います。素敵すぎます。

悟くんは悟くんでロリコンとの境界線に悩むことに。中学生を抱くのになにか問題があるとは思わない。食わぬ膳は恥ということで手を出せばいいと思う。でも、それをしないのが悟くんの良いところ。男の子可愛いです。
葵ちゃんはずっと可愛いですが、一番輝くのはライバルである紫杏ちゃんが出てきてからです。家族ゲームで不満だったのは対抗馬がいないから、漫画としてのドキドキ感がなかったこと。それを打破してくれたのが紫杏ちゃんでした。

この子は本当に登場するのが遅すぎたという感は否めないですが、とにかく素敵すぎるんだ。引っ込み思案で、ダメな子だけど、好きな子のために一生懸命になっている。

「えっちな事されても平気ですよ?」むくわれない恋だし、玉砕しちゃうし、それでいっぱいいっぱい泣く。

それでも、最後は笑顔でいられる。紫杏ちゃん素敵すぎだろ。絶対にいい女になるオーラありますよね。この漫画って、恋を成就した人よりも失恋したり喧嘩した子の方が強い気がします。


もう一つの軸は温水兄を中心に温水・妹、大学の後輩ピヨちゃんの三角関係を描いた恋愛。これに関しては温水兄の紳士っぷりが辛いということに尽きます。この三人の関係はコミックスの巻数を追うごとに進展していくのが素敵。


でも、ピヨちゃんが片思いしてた頃が一番可愛かったですよね。今も可愛いけど。付き合ってるのにろくに進展しないぴよちゃんマジ天使! 今の妹様もキスをするとか暴走っぷりはマジ天使ですけど。もう兄貴は3Pしちゃえばいいと思うんだ。結構問題発言してると思うけど、気にしません。


おまけとして、主人公であり徹夜でシュミレーションゲームをやりこむ廃人真言二次元しか愛せない西浦さんの家庭教師ドキドキライフ恋愛があります。これは非常にゆっくりな進行なのでもはや老人目線で眺められます。はっきりいって、真言西浦さんに対する脳天直撃正論は読んでいてもかわいげがなくて辛いんですけど、本人が意識していない部分での真言が可愛いんです。

彼女のふりをしてあげる真言

月曜日の登校が鬱になるみんなを尻目に一人元気な真言。本人は気づいてないけど、西浦さんに惹かれてるんです。なんか、こういう関係素敵ですよね。西浦さんマジ天使。真言もそれなりに天使。


私が真言で大好きなシーン。徹夜でハイになってるところに西浦さんが来てフライングアタックをかますシーン。結構、真言は常識人なだけにはっちゃけてるシーンが大好きなんです。もっとみょーみょー言っててくれれば良いのに!! …6巻は恋愛動きすぎてなにも変わらない真言に凄い癒されるのは私だけでしょうか。

さて、次回の(後編)では「サブキャラクターが素敵すぎる」編に続きます。