まったり、ゆるゆる、ふわふわ。女の子団地4コマ『少女公団アパートメント』

いやはや、クソ暑いですね…とはじめるぐらいに暑いです。もうクーラーなしでは生きていけない!! でも私の家にはクーラーがない!! ええ、クーラーを買おうと思っています。完全に漫画レビューサイトとは思えないはじまりですね。
漫画的な話題でいえば「よつばと!」展があるので行きたいと思っています。色々ありましたが再びの開催なによりです。しかし、暑い。今回は久々に新刊で『少女公団アパートメント』です。

高校進学を機におばと二人暮らしをするために美空台団地へ引っ越してきたちさ。同じ団地に住む芦花、中学生の七海、咲良らと過ごすまったりゆるゆるふわふわ団地ガールズ4コマ。

私はこのブログでは「お薦め漫画」を紹介する目的で書いていますが、『少女公団アパートメント』は万人にお勧めできる漫画ではありません。でも、この作品の"雰囲気"が気に入った人にはかけがえのない漫画になると思います。少女達の楽しい交流。そんな"楽しい雰囲気"がある4コマ漫画です。


合言葉は雰囲気
この漫画はどちらかというと、絵もキャラクターも薄い。ただ、絵はシンプルであるものの、トーンの影響かキャラクター造形の影響か独特のカラーが作られています。「4コマは個性があれば勝利」なんて思いますけど、独特のシンプルさがなによりの個性になっています。
色々な4コマ漫画がある中でこの漫画ははっきりいって雰囲気重視です。以前「まんがタイムラク」のレビューを書いた時に「オチがない4コマが多すぎる!」と書きましたが、この漫画もそれに近いです。オチがあってもまったくインパクトがないオチとか。「あれ、これオチなの?」というぐらいのインパクトの弱さを誇ります。
じゃあ、面白くないの?というとそうでもない。なんというかズレた面白さがあるんですよね。「雰囲気だけで面白く読めるんだよ!!」と声を大にして叫びたいわけです。ひだまりスケッチAチャンネルと同じ様なことをやってるはず…なのにカラーの独特さやテンポ感が個性的なことからまったく違う漫画に感じられます。
この漫画の特殊なところは、普通の漫画ならある人間関係の煩雑さや悩みを抱える描写がまったくないことです。余計な要素を完全に排除したという光景は萌え漫画の究極に位置する気がしますが、いかがでしょうか。「そんなに現実が嫌か」ではないですがある種、究極の日常漫画なのではないでしょうか。
けいおん!』よろしく大人及び男性キャラがまったく出てこない(おばさんも大学生ぐらいにしか見えない。可愛い…。)"少女"を中心とした構造もユートピアの形成に一役買っていると思います。読者受けというより、意図的に出してないのだろうなぁ、と。作者が描きたいのは「少女だけの世界」という箱庭なのでしょう。ただ、「おいおい、またソフト百合かよ。女の子しか出ないのかよ。」と、思わないのは"女性作家特有の世界感"が演出されている結果なのだろうな、と。もう絵本と同じに考えたほうがいいかもしれません。


キャッキャウフフ空間が止まらない

某おれせんの人も書いていましたが、キャッキャウフフ空間が止まらない!! 友人以上恋人未満的なドキドキさせる友人関係的。「なんかよくわかんないけど距離が近くてドキドキする」レベルなのが微笑ましい。作者さんもそれを分かって描写してるのだろうなぁ、と。あ、一人ド百合の人がいますけど。

お祭りに行く回なのに準備をするだけでお祭りに行く描写は殆どないとか、もはや書きたいのはお祭りに行くイベントじゃない! 準備をしてるキャッキャウフフ空間だけだ!!と言っているようで清々しい。
そしてバレンタイン回であれば、バレンタインにチョコを準備する描写はあるのに肝心の誰にチョコをあげたという描写は一切ないとか、もはや書きたいのは誰かにチョコをあげるイベントじゃない! チョコを作るキャッキャウフフ空間だけだ!!と言っているようで清々しい。

そしてカラオケ回であれば、文化祭でABKを踊るけど、踊れるのは21人でありそのために練習をしているというエピソードが明かされるのに肝心の文化祭のエピソードはないし、その結果も明かされないとか、もはや書きたいのは結果じゃない! カラオケでこの可愛いポーズが書きたかっただけだ!!と言っているようで清々しい。
…と、まぁギャグは置いておくとして。この漫画の場合、すげー「あとで思い返すとどう考えても悪ふざけみたいな分け分かんないテンションの学生ノリ」が上手いんですよ。「なんだその例意味ワカンネ」と思った方は修学旅行に行った時のテンションを思い浮べてください。終始その高ぶったテンションでお送りされる女子のキャッキャウフフ空間は恐ろしいものがあります。あ、いや、楽しいケドネ!


今しかない日常、季節



この漫画ははっきりいって一つのコマの無駄な使いっぷりが凄い。…と、書くと誤解が生じそうですが褒め言葉ですよ? 4コマのうちの1コマを使っての季節感や生活感の描写が凄い。多彩な表現を使って描写するんですよね、その描写に用いた1コマがこの漫画のなによりの特徴であると思います。
ちなみに、上から順に「プールの帰り」「気づいたら寝ちゃっていた夜の部屋」「買い物をした夕方の帰り道」です。

先ほど書いた、「究極の学生ノリテンション」に象徴される回が、突然の雨に走りだす…というだけの場面。"ただ雨を描写するだけのコマ""突然の雨に走りだしたのが楽しかった"なにもない瞬間を楽しむ…この漫画を象徴するシーン。これこそが『少女公団アパートメント』です。私の場合「これ別の漫画で同じことされても正直つまんねーだろうなー」と思ってしまう内容ですが、独特のカラーとキャラクターの可愛さがあるから読めるんですよね。

このように一コマ「今という時」を挿入してくるのは日常4コマにとって大切なものである"かけがえのない日常、今しかない時間"が演出されていて素敵。ただ、プールに帰るだけの後ろ姿なんて本来お笑い4コマであれば必要のないコマです。でも、日常を描くためには決して無駄なコマではないんです。「それが現代の4コマである!」と塾長のように叫ぶのは大袈裟ですかね。大袈裟ですね。



と、いうわけでネジがハズれたような4コマ漫画『少女公団アパートメント』でした。なんか久々に新刊語りが出来て嬉しい限りです。いや、新刊の4コマも買ってるんですけど「なんかレビュー書くほどじゃないな」という4コマも多いんですよ。その中でレビューを書くに至った新刊はお薦めなのです。面白いかは分からないけど、雰囲気はいいよ! そんな感じでお薦めです!
あ、七海ちゃんちょー可愛い。ボーイッシュで子供だけどバレンタインにチョコ作ろうとするけど誰にあげるか聞くと困っちゃったり、可愛い服に憧れて隠れて着てみたり。その服をやぶいちゃうおてんばっぷりだったり。女子力低いのに女子に憧れてるのが可愛い!! うん、カワイイは正義。

この作品の作者からこんな素敵な作品が生まれるなんて予想してなかった。マジで。しょうがないけど、事実なんだからしょうがない。なーんて☆ねっ!