揺れる片思いの"輪"完結 『まほらば』作者が描く名作学園4コマ『わ!』

クーラー買いました。『よつばと!』展行きました。もうゴールしてもいいよね…。
今回はめでたく完結した小島あきら『わ!』をご紹介します。現在休載している『まなびや』とほぼ同時にはじまった連載でネット→本誌という変遷を辿りました。『まなびや』とは舞台及びキャラクターがリンクしているなど作品的な繋がりが見られます。まぁ、つまり両方読め!!ってことだな、多分。

とある高校に通う学生達の、穏やかで緩やかな日々。
特別なことはないけれど、いつもの毎日だけれども、
友達がいて、好きな人がいて。
小島あきらが贈る、まったりほんわか漫画。

完結巻の表紙にしては地味だなぁ、と思いましたが表紙を飾っているのはこの作品のヒロイン達なのですよね。ちなみに、このメインヒロイン達以外にブレイクと称したショート4コマコントをするキャラクター二人もいますが見事に表紙からハブられています。うん、残念だね。おまけカット程度の扱い。


全3巻というのが素晴らしい
『わ!』は4コマとしてのスタイル、話構成と革新的な4コマ漫画だったと思います。非4コマ誌だからこそできることでしたが(当初はガンガンONLINE)横長をベーシックにするというのは今までなかった(と、思う。)小島あきらのシンプルかつ丁寧な絵柄と相まってすげー読みやすい漫画でした。
『わ!』をまったく読んだことがない方にどんな漫画か説明すると、キャラクターそれぞれが片思いをする4コマ漫画です。


エロゲヲタ→不思議ちゃん→よくできた子→可愛い大好き→生徒会長→ヤンキー→男まさり→エロゲヲタ

という"片思いの輪"がこの作品のテーマであり、学生の思春期的感情を描いた素敵4コマ漫画です。基本的に恋愛漫画なんてのは「何年たってもすすまねぇぇ!!」「また勘違いの擦れ違いかよ!!」というのが恒例。特にファミ通の近藤なんとかさんの漫画とか。特に4コマ漫画となると「1巻進んだのに手を握ってすらいねぇ!!」「声すらかけてない!!」というのが普通です。

この漫画の場合、逆に「展開はぇぇぇ!!」と叫んでしまうぐらいに展開早いです。2巻が終わった頃には「…え!? もう告白パート!? ちょwwwwwwwww」と思ってしまったぐらいですしね。普通の4コマ漫画と比べてもページ数も少ないため(ボリュームはありますけど)サクサクと読むことができます。
勿論、それぞれが片思いをしている以上すべての恋が成就するなんて展開はないわけで。誰の恋が成就するのか、誰の恋が繋がらないのか、それは勿論ネタバレになるんで書きません。真相はあなたの目で確かめてください(キリッ このテンポ感、サクサク感、全3巻だからこその名作を言わざるをえません。


「ぶっちゃけ、まほらばって最後はハッピーエンドだけどキャラクター増えすぎだし、何個も人格あるとか結構キャラクターに複雑な事情とかあって重い部分あったよな。巻数も多いし、途中で読むの辞めた人も多そう。展開結構ダルい部分もあるし。」と思っている方も多いのではないでしょうか。まぁ、まほらばの最後の展開は神ですけど。
小島あきらの作風はほのぼのの中にシリアスや重い設定、複雑な人間関係、つまりは"陰の部分"を忍ばせてくるんですよね。それが『まほろば』を面白くしてるんですけど。それを考えると『わ!』は複雑な人間関係はありますけど、小島あきらの"陽の部分"が全面に出ていた漫画でした。まぁ、つまりこんな楽しい漫画ないわけで。丁寧かつシンプルに描写する小島あきら感。たまにはこんな明るいラブコメがあってもいいと思います。
まぁ、一人はエロゲヲタで学校でエロゲやってるけど。まぁ、家庭的な子かと思いきや複雑な家庭事情を抱えた女子高生とか出てくるけど。なんたってパチスロで生活費を稼ぐからね。 まぁ、輪の中にも不思議ちゃん(女)→よくできた子(女)とかおかしい輪もいますしね。あ、このレズ関係は成立しません。残念、ネタバレでした!


小島あきらは可愛い演出の達人だよなおまえら

ドカーン!をはじめとして、可愛いんですよ小島あきら演出は。また今度語るから未来で待ってて!


"私の趣味は人間観察です"そして…
この最後の項は是非、作品を読んでいただいてから読んでいただければ幸いです。タイトルの『わ!』は片思いの輪という意味だけではありません。それが最後に集約されています。朝霧美月の「趣味は人間観察」からはじまるこの漫画。その言葉の全てが朝霧美月のモノローグに繋がります。

私の趣味は人間観察です
最近私は思うんです
もしかすると人間は他人と繋がるために生まれてきたのかもしれません
考えてみればどんな人間でも何もないところから突然生まれるわけではなくて
両親という繋がりがあって初めて この世に生をうけるわけです
そして当然父親にも母親にも両親がいて その両親にも両親がいて
そんな数え切れないほどの繋がりが大きな輪を作って この地球を包み込んでいるのかと思うとなんだかはかりしれません
ちょっと話が大きくなりましたね。とにかく私は元気にやっています
また面白いことがあったらすぐお知らせしますね
それまでどうかお元気で

それぞれ独立したキャラクターが繋がり輪を作る。片思いの輪ではなく、繋がっていく人間関係の輪だったんですね。これを新しい恋をするわけでもなく、恋を成就させたわけでもなく、最も感情に起伏のない美月が思っている、というのがとても素敵だと思います。でも、タイトルの意味は一つではありません。もう一つの輪の回答が最後のページにありました。

虹。

それでは また

第1話等の表記が「だい○わ」なのもいいですよね。みんなで広げよう友達の輪っ!! ああ、あと最終話がモノローグで終わる話って名作ですよね。奇面組しかり。む、誰だ夢オチなんて言ってるのは。あれは「これからまた楽しい日々がはじまる!」というエンディングなんですよ。で、いつ連載再開するんですか新沢先生。

早く『まなびや』をバリバリ読みたいです…。