"女子学生・百合・可愛い"この王道学園4コマがすごい!『ホイップノート』

台風が直撃してるので旅行を辞めました。ざーんねん。
今回ご紹介する『ホイップノート』は個人的にドストライクの作品です。某レビュアーさんの☆で評価する程度の能力を使うのであれば五つ星をつけたいレベル。ただ、手放しで「うひょー!」とオススメできるかというと、できないのが4コマ漫画の難しいところ。とりあえず「ゆるゆりのソフト百合感が好きな人は読むべき!」と前置きしておきましょう。

一ノ蔵るいせは両親は共働き。お婆ちゃんが一家の食卓を担っていたが、そのお婆ちゃんがアメリカに行ってしまう。そこでるいせが食卓を受け持つが、彼女はホットケーキしか作れない…。その状況を打破するため料理部に入ろうとするが、料理部がないことが判明! そんな時耳にした「およめさんクラブ」に入部することにしたが、誰一人としてまともに料理を作れないと判明…。それでも、部長のさくら、相方の知花、同級生のレコと共に立派なおよめさんを目指すのだ!

一言で言うなら「可愛いは正義!!」


王道4コマの強さ
あまりきらら系の4コマに理解がない方がよく言うのは「萌え4コマなんて中身ないしつまんない。どれも似た感じだし、大体学園物で女の子が話してるだけじゃん。そんなんどこが面白いねん。」なんて言う方々もいますが、それも事実で間違っていないと思います。でも、そんな読み方は少なくともこの作品に関しては勿体ない。
確かに、設定からキャラクターまで既視感しかない「これはいつか見た風景」的4コマ漫画も数多くありますが、この『ホイップノート』はそんな既視感という壁の先にある「女の子が可愛い」王道的4コマを究極的に突き詰めた作品です。
元々、作者である未影先生は前作の『イチロー!』が長期連載になった作家であり、きらら以外での仕事もしていることから非常にポテンシャルの高い作家さんです。異識(あっちこっち)、三上小又ゆゆ式)、ざら(しかくいシカク)と並んで「作品の人気は赤いけど、きららでアニメ化してない作家」の代表格です。
これは余談ですが、前作は一時期は毎回表紙で「そろそろアニメ化あるんじゃないかな。」と期待されつつも、結局かなめも以降MAX自体にアニメ化がないという事態。未影先生のポテンシャルはアニメ化候補だと思うんですけどね。
前作『イチロー!』は雑誌の看板ではあったものの、キャラクター等にちょっと癖がありちょっとお薦めはしづらい作品でした。その影響があるのかは分かりませんが、今作はビックリするぐらいに王道で、学園物で女の子中心コメディという非常にオーソドックスであり、普通ならベタに感じてしまう部分も「えっ、こんな王道って強いの!?」と感じられるほどキャラクター、絵柄、ストーリーと洗練された作品になっています。


今作は方向性は違うものの、『ゆゆ式』と並んで「なにも考えずに脳みそホエホエした状態で楽しめる作品」だと思います。そのオススメの仕方どうなの!?と思いつつ。最近のきらら4コマは「百合」がもはや王道になっている現状です。それはこの作品も同様です。
この作品は男性も一部出てきますが、基本女性メインです。『ゆるゆり』に代表されるように、最近は友人感覚の百合が流行りですよね。(※性的なレベルにまで発展しないキス、手を握る等のライトな百合)微笑ましいというか、スキンシップによってお互いが欲しいものを満たしている様子は同時に読者サイドも満たしてくれます。この漫画の場合、キャラクター間であまり百合を意識してないのでそこだけは物足りなくもありますが。
もはや「百合」すら王道という辺りきらら4コマは恐ろしいですね。素敵です!! 色々と作家山に百合スタンスもありますが、軽くもサラッと百合を匂わせてくれるのは読者にはご褒美ですよね。この漫画はガチで百合描写の宝庫なので『ゆるゆり』好きは読むべき、と百合男子に提唱します。そう、たとえばこんな場面。


るいせとちーちゃんが、寝っ転がっていて一緒に本を読んでいて。
る「ちーちゃん、おなかー」
ち「おー、おなかだぞー」
る(クンクン)
ち「かぐな!」
る(ペロペロ)
ち「なめるな!」

当然のように密着してるというのがソフト百合感ですよね。え、これもしかしてハード?


『ホイップノート』の楽しみ方。
この作品は"およめさん"を目指して少女たちが成長していく物語です。「ホットケーキ以外なにも作れない主人公」というのがスタートであるため、基本料理を通して漫画が進んでいくのですが、徐々に、ではありますが料理の腕が上がっていきお嫁さんレベルがあがってるのが分かるんですよね。ですが、成長は料理の部分だけではありません。

全体的に人格が幼いのはさておき、るいせ(バカ)、ちーちゃん(大人)、さくらさん(天然)と、各々がウィークポイントのようなものを抱えているものの、精神的には成熟しています。ただ、レコちゃんだけは精神的に大人になりきれず、まだ吹っ切れてないのですよね。徐々にではありますが、同好会メンバーとの交流を通して成長していく様子が描かれています。
4コマ漫画というのは、私たちが感じ得られない青春の1ページを読み取ることができる。その出来事を通して、キャラクターたちが成長していく。ドラゴンも出てこなければ世界の危機も救わないけれど、日常の些細な出来事を通して成長していく変わっていく。「今回も何も起きなかった」は「間違いなくなにかが起きている」のですよ。
そう考えるだけで「日常系4コマ」の楽しみ方は大分変わってくるのでは、と思います。『らいか・デイズ』等のむんこさん作品ぐらい"成長"と"変化"を分かりやすい作品ばかりではないので、その辺はいかんせん説得力に欠ける部分もあるかもしれませんが。でも、そう考えると素敵やん、ということで。
ただ、主人公であるるいせに関しては元々の人格が幼すぎて(そこが可愛いところでもありますが)まだ掴みきれない部分もあるのですよね。主人公が掴みきれないってどうなの!?と思いつつ、この物語に関しては気を長くストーリー4コマとして楽しみたいと思うので、これからに期待したいと思います。さくらさんと鈴真くんの関係とか、るいせと弟の桜太くん(ショタ!!)の関係とか、おいしい部分もあるしねっ! 個人的には是非そのカップリングの薄い本とかも読みたいところなんですけど。およめさんならそういう部分も特訓するよねとか思いつつ。
前作『イチロー』は4コマ史に残る素敵な結末でしたので、まとめ方には期待です。いや、まだまだ続いて欲しいので気が早いですけどね。


レコちゃんは俺の嫁

きららにいる数多くの漫画家さんの中でも未影先生は特に「確固たる自己の絵」を確立した漫画家さんです。看板作家たる所以でもありますが、当然の如くイラストレベルが高い。過去に画集を出してるところからも分かるように、構図が非常に豊か。特に、女の子が柔らかそうというのがあると思います。女の子が抱き合ってる絵を書くと女の子が凄い華奢で柔らかい存在だ、というのが分かります。
もはや、そのイラストが素敵すぎて「話読まなくてもいいから絵だけで楽しめる…。」というレベルに達してると思います。扉絵イラストとか洗練されててカラーで見たいと思うのが沢山あります。1巻には肌色回と呼ばれている伝説の温泉回(※ほぼ女の子の体で画面が構成されており、ほぼ全コマが肌色であることから肌色回と呼ばれている。)も収録されています。ただ、カラーじゃないので超惜しいんですけど。是非画集が出たら再収録していただきたいところ。未影先生の凄いところは、決して巨乳でナイスバディじゃないキャラクターの体をエロく書かれている、という部分なんですよね。「完全にロリコンですありがとうございます。」という意見はさておき。
「レコちゃんが可愛すぎて生きるのがつらい。」とか思うぐらいに感情移入してもいいと思うんですよね。恥ずかしがり屋で意地っ張りだけど、素直ですげーいい子なんですよ…。なんか書いてて泣けてきました。レコちゃんは俺の嫁、ってこれどんなレビューだよと思いつつ。

ほぼ同時にドラマCDが発売されていることから会社の期待が見えますね。でも「ドラマCDになるとアニメ化しない」の法則があるのでどうなのでしょう。個人的にはアニメを見てみたい気もするんですけどね。

るいせとレコちゃんのコンビが好きです。るいせもアホの子で可愛い。ニクめないアホさ
って作品的なバランスとして重要だと思います。るいせに関してはどう見ても小学生か中学生がいいところってぐらいに、ちょっと子供っぽすぎるところもあるんですけどね。