主人公はホームレスのダメ人間!『えのきづ / 桜乃さん迷走中!』

怒濤の2日連続更新です。2日で怒濤って、毎日更新してる方に申し訳ないですね。ちなみに、去年もんじゃめな関連の更新の時は何故か2日連続更新です。やべえ。
今日は早朝から謎の発熱と頭痛に襲われ死にそうになりました。風邪薬を飲んだら結構普通に戻りましたが。今回は個人的に以前から「面白いよ!!」と言っていた『桜乃さん迷走中』をご紹介。

社会人なりたてで、職も家もすべて失いました。 現代の若者に社会は厳しかった…。 就職まもなく会社が倒産し、路頭に迷うことになった桜乃さん。 全財産はトランクとぬいぐるみ1つ。野宿する日々からの脱却はいつ!?

個人的に今年のベスト5には入ってます。上半期を越えていい4コマが沢山でてきてます。お薦めがあったら教えてくださいねー。


主人公のクズっぷりが素晴らしい
えのきづさんの新作ですが、「単行本出るのか!?」と思ったぐらい不安定な設定と作品だったので、この先どうなるのか不安な部分もありましたが無事単行本が発売しました。連載開始した時は「おー、えのきづさんの新作か。いきなり無職かよ!! 公園で路上生活とか大丈夫かよ!!」みたいな感想でしたから。

まぁ、徐々に無職からバイトにクラスチェンジし、家も居候で上がり込み結構安定した楽しい生活を送るのでだんだん不安も薄くはなっていくのですが。弟子も出来ますしね。
いきなり無職になる設定もそうですが、主人公の性格がクズ寄りというのがなにより不安要素でした。主人公は無職になったことを実家に報告せず、家がなければ人の家にあがりこみ、バイトをはじめたアウトドアショップでは「外に出るなんてめんどくさい」と本末転倒なことを言う…。根本的にクズ寄りな人間が主人公というのも斬新な設定。まぁ、憎めない性格をしてるので読んでて不快感はないですけどね。
…多分、嫌いな人は本当に嫌いなんじゃないかと思います桜乃さん。見ず知らずの人の家に居候したり、賞味期限切れのを料理に混ぜようとしたり、蕎麦屋の蕎麦をマズいって徹底批判したり、ダイエットを一瞬で放棄したり、サバイバルの達人だと偽ったり…。数え切れないぐらい人間のクズ要素が溢れてくる。ドヤ顔のクズ人間。

表紙だけとっても桜乃さんは酷い。琴浦さんはあんなに可愛い表紙なのに、桜乃さんの表紙は負のオーラが満載すぎてヤバイ。地面に書いた「しごとください」の文字、哀愁を漂せるクマゴロー…。かつてないぐらい負のオーラにこっちがひくぐらいですよ。もうちょっと売る気があるなら可愛い表紙にするべきだった。好きです、好きですけどね!


えのきづさん風味
えのきづさんは『琴浦さん』もそうですが、基本まったりしつつ時々ブラックな雰囲気を作風に盛り込んできます。まったりしたコメディと思いきや、ちょっぴりブラックなシリアスが織り込まれる。今作ではそのブラック要素がより顕著です。主人公がホームレスになって世間の厳しさを知ったり、就職しようとしてバイトで妥協したり…。両親が上京してきたら必死に転職したことを誤魔化そうとしたり…。

そういうナイーブな部分は普通ならデフォルメして誤魔化すと思うんですけど、えのきづさんはその辺を赤裸々に描写していくから好き嫌いが別れる気もします。例えば序盤に盛り込まれる再就職箇所が就職活動で苦汁を舐めた身には辛すぎる。多分、就職活動を現在進行形でしてる人はもっと辛いでしょうね。それでもその辛い現実を姑息な考えとプラス思考で乗り切っていく桜乃さんは素敵だと思います。
絵柄はデフォルメ的で可愛いので琴浦さんのシリアスに関しては感傷的で辛い部分があるので、桜乃さんの無責任なブラック要素は個人的に非常に楽しいものでした。逆に琴浦さんはあのシリアス要素が無責任に楽しみたいコメディ4コマには辛いものだと思ったので。えのきづさんの作風の広さを感じられることができます。
双見酔さんの『空の下屋根の中』が「生きること、働くことと真面目に向き合ったファンタジー」的作品だとすれば、今作は「真面目に生きること、働くことから目を背けたファンタジー」的作品でしょうか。どうしようもない設定とえのきづさんらしいブラック要素が合わさった10年に1作の迷作だと思います。お薦めです!!