どもー、八戸です。色々考えてることはありますが、それを実行に移すとなると色々大変ですね。頑張ります。
今回は『ラジ娘のひみつ』をご紹介。もとい、小坂俊史特集。
普段は引っ込み思案なのに、マイクの前では性格が豹変してしまう新人パーソナリティーのラジオ番組の奮闘を描いたコメディ。見事オーディションを勝ち抜いたヒロイン「恩田あいり」が、AMラジオ局「TMZラジオ」の看板番組のピンチヒッターを務めることに。しかし、スタッフの思いがけない方向に番組は進んでいきます。ひとくせもふたくせもある女の子がいろいろやらかしちゃう予感!?
小坂俊史作品を振り返る
私は4コマを読み始めたころに小坂作品があり、非常に思い入れが強い作家です。「新作」を取り上げることが多い当サイトですが、個人的に取り上げたい作品がなかったためなかなか取り上げる機会に恵まれませんでした。そこで、今回は小坂作品(オリジナル作品)の著作をすべて紹介してみたいと思います。改めて「1巻完結が最近は多い」と思うとともに、「こんなに書いてたんだなぁ」とファン目線で感慨深いものがありました。私は結構ファンな方だとは思うんですよ、ええ。みょーに辛口になる部分もありますが「君のことがチュキだからー!」ということでご愛嬌。
小坂俊史の魅力はキャラクターです。強い個性のキャラクターが理不尽であったりヘタレたりするのが面白い。キャラクターが立ってないコント4コマだとどうしても読後感が薄い。一時期は「ネタで勝負する」というコンセプトを前提にしたコント的作品が目立ちましたが、『ささきまみれ』が単行本が出なかったのを辺りから、良くも悪くも「キャラクターから組み立てる以前の小坂スタンス」が戻ってきた感があります。個人的には作品の全体的な方向性が『中央線モノローグ』と『ささきまみれ』が転機になった感があります。
一時期のコメディ系の新連載が結果的に鳴かず飛ばずで、明らかにシリアスな方向に向かいつつあった小坂先生でしたが、最近はギャグに回帰している感がありキャラクターコント路線を広げつつも、『ステキな終末』(死に方、余生を描くブラックでちょっとハートフルな作品)を描いており、「小坂スタンス」が安定してきた感があります。それも『せんせいになれません』というライフワーク的ギャグ作品があるからこそ安心して描けるのでしょうか。まだ単行本になっていませんが『おかん』というパワフルなお母さんをメインにした作品も新しくも懐かしい小坂テイストがあり非常に好きな作品です。
小坂先生は私の分類では現在までに4期に分類することができます。
初期小坂…月刊フリップ編集日誌(1999年 - 2002年)、サークルコレクション(1999年 - 2003年)、ひがわり娘(1999年 - 2006年)、とびだせ漂流家族(2001年 - 2003年)
中期小坂…サイダースファンクラブ(2009年 - 2007年)、ハルコビヨリ(2002年 - 2008年)、幼稚の園(2006年 - 2008年)、ささきまみれ(2008年 - 2009年)れんげヌードルライフ(2004年 - 2009年)
後期小坂…やまいだれ(2005年 - 2009年)、中央モノローグ線(2008年 - 2009年)、遠野モノがたり(2009年 - 2011年)、オフィスのざしきわらし(2009年 - 2011年)、球場(ボールパーク)のシンデレラ(2010年 - 2011年)
現在小坂…モノローグジェネレーション(2011年 - 2013年)、おかん(2011年-)、ラジ娘のひみつ(2011年-)、これでおわりです。(2013年-)、月刊すてきな終活(2013年-)
初期の荒削りなギャグを主とした「初期小坂」、強い個性を持ったキャラクターを主とした「中期小坂」、シリアスかつシュチエーションに拘った「後期小坂」、強い個性を持ったキャラクターを主とし、作品の方向性をキャラクターギャグとシリアスに分類した「現在小坂」と分けられると思います。まぁ、長期連載になっているものもありますし、一概にすべてを分類できるわけではないですが、私にはそんな印象があります。長期連載の『ひがわり娘』『せんせいになれません(1997-)』なんかは芯はあるものの、作品として変化している部分が多々あるから面白いです。「小坂俊史」という漫画家の"変化"は個人的に興味深いです。モノローグシリーズも作品ごとに全然印象違いますからね。その変換機を意識して読めばまた違った小坂俊史像が見えてくるのではないでしょうか。
ラジ娘のひみつを語ろう
変換機を迎えた小坂先生の作品であると私は思っている当作品。久々にメインキャラクターからサブキャラクターまで個性が強いです。メインであるあいりの二重人格(いつもの毒舌クソ野郎キャラ、可愛らしい素のお嬢様姿)は面白い。毒舌クソ野郎ではあるが、不快なクソ野郎ではなく、どこか愛嬌がある。ハルコビヨリのハルコのような完璧ではない「隙がある」から、可愛らしく感じます。以前までの小坂先生だと「萌えキャラ? うーん…。」みたいな抵抗があったでしょうが、今は割り切って書いている感がある(毒舌キャラが中和しているので割り切れるのだろうが。
最近の小坂作品は「メインが強いとサブが弱い」「メインが弱いとサブが強い」みたいな現象があったんですけど、今作品に関してはあいりに負けてないぐらいサブキャラクターキャラクターが素晴らしい。ラジオマニアの構成作家柿沼、武闘派ミキサーの妻見、バランスをとるマネージャー佐保さん、ライバル的存在の交通情報の道端さん。ハガキ職人と郵便局員。ここまでサブキャラが充実してる小坂作品も珍しいな、と。
ただ、本筋に全く絡まない"ハガキ職人と郵便局員の戦い"は面白いんですけど、ゲストをバカにしたハガキを送った際の暴力回はやりすぎかなぁ、と。よく編集とか通したな、と思うネタです。あくまで社会良俗に反しない程度にやってほしいなーと(まぁ、今さら公序良俗とかワロスwwwって感じかもしれませんけど、読後感相当悪いんですよあの1本だけ)。ちょっと郵便局員のキャラに全く愛嬌がなくてあんまり好きになれないです。ブラック加減が初期小坂作品寄りのキャラといえばキャラなんですけど。
それから、ラジオという設定が上手く生かされてるな、と。『ラジオでGO!』というラジオ4コマもありますが、あれはラジオ局を舞台にしたオーソドックスな作品です。ラジ娘に関してはただラジオ局を舞台にするわけではなく、そこに「姿が見えない」という要素をピックアップしていて、そこにドラマがあります。「パーソナリティ本人のキャラクターを隠す」という部分に伊集院光要素を感じます(あれはイケメン設定がブサイクを隠す、という逆展開ではありますが。可愛らしさを隠すという設定は改めて言い得て妙。)ラジオ漫画だと『O/A』がありますが、この作品も「姿が見えない」「声」を生かした作品です。「中期小坂」の強いキャラクターが帰ってきつつ、丁寧な部分は丁寧に書かれている、それが現在の小坂先生の作品。いい感じにバランス取れてます。これからも小坂作品は変化という名の進化を続けていくでしょう。それを楽しみに追いかけていきたいと思います。